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 次の日。本来は絶対安静のところを担当医に頼み込んで1日だけ学校に登校させてもらった。目的はただひとつ。


「折原くん!」


 見えた背中に呼びかける。綺麗にくるりと振り返った折原くんの顔をみたら胸が締め付けられたような、気がした。


「おはよう」

「おはよう折原くん!」

「はは、元気だね」

「ああ、うん、あの、昨日、もしかして」


 キーンコーンカーンコーン。始業の予鈴が言葉を遮る。なんてタイミングの悪いこと!


「昨日。‥どうかした?」

「あ、‥ううん、なんでもない。また後で」


 細い背中を見送った。






「6時間めのロングなにやんのー?」

「なんかさっきアンケートとか言ってなかった?」

「まじでー?だる」


 そんな会話が聞こえてきた休み時間、廊下側の1番後ろの席を陣取るわたしの目に入ったのは並んで歩く岸谷くんと平和島くん。あの2人仲良いなあ。


「あれ?苗字さんじゃないか」

「こんにちは」

「最近良く学校来てるよな、体調良いのか?」

「‥‥うん、ちょう良いよ」


 意味もなく嘘をついて、またね、と2人に手を振る。笑顔で振り返してくれた2人に笑って返した。


「席つけー」


 入ってきた担任が手にしていた紙を配る。窓側から配られるせいで必然的にわたしのところへ回ってくるのは最後になる。機械的に裏面で回ってきた紙を裏返して名前を書いた。そして、目に、入った文字は。


「進路希望調査だ、きちんと考えて今週中に提出しろよ」


 第3希望まで欄が設けられたその紙から目が離せない。あっは、進路希望調査ねえ。誰かが言ってたアンケートって、‥これのことだったのか。
 今日、やっぱり、来るべきじゃなかったのかなあ。


 放課後。教卓に提出された進路希望調査には、適当な字でたった二文字だけ書かれていた。




進路希望調査 苗字名前
 第一希望 天国
 第二希望 
 第三希望 


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