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 彼の第一印象は単純明快、イケメン。黒髪に赤い瞳が良く映える。いつも思っていたが彼は口を開かなければおおよその女を手にすることが出来るのではないだろうか。


 かくいうわたしも彼に魅せられたひとりである。きっと彼はわたしの名前も知らないだろうが、それでもいい。叶えるつもりもない。何に関してもいつか終わりを迎えるのだから、始まりさえ創らなければいいだけの話。

 そう思っていたはずだった。



「折原くん、‥プリント落としたよ」


 雨の日の廊下。ちょうどすれ違う瞬間に彼の手荷物から紙が落ちた。気付かなかったのだろうか、そのまま歩いて行った彼を追いかける。拾ったプリントを差し出した。


「ああ、ありがとう」

「どういたしまして。えと‥では」

「ちょっと待って」

「へ、あ、はい」

「苗字名前さんだよね?シズちゃんとつるんでる」


 シズちゃん?誰だ。そんな子いただろうか。そもそも同じクラスの人の名前さえほとんど覚えていないのだから、知っているひとならすぐに思い出せるはずなのだが。‥‥シズちゃん、しず‥しずか、しずえ、‥しずお?


「ああ、平和島くんですか。つるんでるというか‥‥優しくしていただいてます」

「へえ、あいつがねえ」

「?」

「ねえ名前ちゃん、俺とも仲良くしようよ」

「え」


 素っ頓狂な声をあげてしまった。だ、だって、いきなり仲良くしようなんて言われても!そもそも人とのコミュニケーションだってどうとれば良いかわからないんだよわたし!


「よ、よろしく‥お願いします‥?」

「くす、何で疑問形?‥うん、よろしくね」


 すきなひととお友達になりました。


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