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 夢がなかった。やりたいこともなかった。だから専門学校は行く意味は皆無、必要なし。社会に出て苦しみに藻掻くのも却下。でも大学行ってまで勉強するのは本当にご勘弁願いたくて、進路希望調査にはニートと書いた。静雄はやりたいようにしろって優しく頭を撫でてくれて、新羅はそれじゃあわたしが困るからちゃんとバイトくらいしなよと心配してくれた。折原は大爆笑していた。それをみて進路を大幅に変更した。「囚人になる」。絶対折原を殺してやる。
 もちろん翌日先生に呼び出しを食らった。カウンセラーというおまけつきで。





 雑踏のなか、色が変わってぴこんぴこんと上からなる音を聞き流しながら横断歩道を渡る。見渡すかぎりビルしかない街の一角、注視しなければ見過ごしてしまいそうな小さな建物の受付にバッグから取り出した箱を渡す。有名ビールメーカーの包装紙に包まれたその箱を受け取った管理人と一言二言挨拶を交わした。
 午後3時。どこかのカフェテリアにでも寄って帰ろうと小さな建物を後にする。


 ホットコーヒーにミルク1つ、シュガー2本。2人用のテーブルをひとりで貸し切って携帯を開く。不在着信の見慣れた番号に溜息をついて、リダイヤルはせずに携帯をバッグにしまった。


 その女はガラス張りの壁の向こうを見やり、わらう。




 さあさあ寄ってらっしゃい観てらっしゃい!おかしなおかしな人間どもの、おかしなおかしなお話だよ!




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