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 どんがらがっしゃん、擬音にしてみれば可愛らしいものになるけれど実際はとんでもない音が廊下から聞こえる。そしてその物音にも負けないほどの叫び声。きっと全校生徒の大半が、この騒ぎの犯人に気付いているだろう。


「ちょっとシズちゃん、いい加減しつこいよ」

「うるっせえ!」

「なーんで言葉通じないんだろうなあ、嫌になるよ」

「そりゃよかった、じゃあ死ね」

「おっと」


 ちょうどそのとき用があって教室から出ようとしていたわたしは当然廊下に出ることになるわけで、でも廊下では戦争もどきが絶賛進行中で、それはつまり


「え?っ」


 右半身に掃除用具入れが衝突、そして視界はブラックアウト。





「うう、‥ん」


 ああ、からだのあちこちが痛い。‥目をあけて、数秒。ここはどこだ?


「大丈夫?‥なわけないか、意識ははっきりしてる?」

「う、‥あの、?」

「運悪く喧嘩に巻き込まれて保健室に運ばれたんだ、指先は動くかい?」

「‥いち、おう、動きます」


 動かしたときに痛みを感じたものの、骨が折れたとかそういうことはなさそうだった。ところで一体このひとは誰なんだろう。目が覚めるまで傍に付き添っていてくれていたみたいだけれど、わたしの知り合いではないし、平和島くんの友人だろうか。


「あの‥ありがとうございました。先生もいますし、もう大丈夫です。えと、お名前‥」

「ああごめん、自己紹介がまだだったね。僕は岸谷新羅。君は‥苗字さん、で合ってるかな?」

「‥あ、はい」

「僕が謝るのは筋違いだけど、今日はごめんね」

「そんな‥大丈夫です、ほ、ほら、この通り何ともないですし」


 からだを起こして腕を上下させる。うわさの岸谷くんは目を見開いたあと微笑んだ。変わり者だって聞いていたけど、まったくもって常識人じゃないか!


「それじゃあ、お大事にね」

「あ、うん、本当に、ありがとう‥!」


 それにしても平和島くんにしても岸谷くんにしても、顔が整ってるよなあ。やっぱり類は友を呼ぶ、って顔にも当て嵌まるのだろうか。


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