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「へ、‥平和島、くん、先生が呼んでたよ」


 ただ、平凡を望んでいただけのはずだった、の、に。


 この高校には3人の有名人がいる。それはどれも決して良い意味ではない。機嫌を損ねさせたら殺されるといわれる喧嘩を売ってはならない怪力男、言葉通りあらゆる情報に精通し全生徒ならびに全教師総ての弱みを握るといわれる男、このとんでもない2人と行動を共にする見た目は至って常人の男。それぞれの人物の名を平和島静雄、折原臨也、岸谷新羅という。最後の岸谷新羅に関してはあくまで表の説明であって、裏では少々異質な性癖を持っているのだが、これはまた後日話すとしよう。ここまででこの3人組には好んで関わろうとする人間は余程のバカか転入したばかりの無知な生徒以外皆無と言えるのがお分かり頂けたと思う。

 何故こんな話をしたのかと言えばそれはそれは至極単純な理由で、先生さえも殆ど黙認しているこの3人のうちの1人、それも一般的には1番関わりを持ちたくないであろう平和島静雄に、運悪く先生に捕まり彼を呼んで来いと命令された女生徒がいたからである。


「あ?」

「うあ、あ、あの、地学準備室にいる、そう、で」


 ばくばくばくばくやかましい心臓に肋骨をぶち破られそう!関わりたくないがために俯いたせいで目の前の彼がどんな表情なのか知ることはできないが、これが最善なのだと言い聞かせる。彼のいい噂は一度として聞いたことがないので、わたしとしては今すぐ!この場から去って彼の記憶の中から削滅されたいのだがそれは無理な相談だろう。何故なら彼を無事に地学準備室まで見送らなければ、今学期のわたしの地学の成績が更に悲惨なものになってしまうのだから!

 ふと。わたしの視線の行方、つまり彼の足が動きわたしとの距離が縮まる。ひいいいと声にならない叫びをあげようとした丁度そのときだった。頭にやんわりと圧力を感じ、二度ぽんぽんと柔らかく叩かれる。何事かと顔をあげた先には初めて見る、彼 の、


「‥ああ、どーもな」


 遠ざかる足音のみが、わたしの耳に届いていた。





 ‥ジーザス!お父さんお母さん、わたくしは本日、学校生活の中で決して関わりたくなかったひとを、すきになってしまいました。



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