7 焼きそばパンももう4分の1ぐらいしか残ってない程に、志乃さんは食べ進めていた。 「意外ですよそりゃ……。そんなイメージなかった」 「まぁ……良く言われる」 「じゃあケーキとか好きなんです?」 「そうだな、好きだぜ。男一人でケーキ屋なんていけねーから滅多に食わねーけど」 「行ったらいいのに!なんかそこは志乃さんらしいや」 体裁をちょっと気にしちゃうところ。 男一人でケーキ屋、が恥ずかしいって思っちゃうとこが志乃さんらしい。 あ、恥ずかしいとは言ってないか。 「なんだそれ」 「なんとなくですよ。何ケーキが好きなんです?」 「なんでも好きだけどスタンダードな苺ショートが一番いいな。」 「俺はチョコレートケーキが好きです」 「うん、美味しいよな。分かるぜ」 最後の一口を食べた志乃さんが、俺を見て頷いた。 その目が、何故か俺を射抜いて俺はそのまま口を噤んでしまった。 「チョコレートケーキ、か。」 そう言った志乃さんが少しだけ俺に寄った。 どくっと心臓が鳴る。 「ありがとな、ハル。美味しかったぜ焼きそばパン。今度さぁ飯でも連れてってくれよ」 「お、れは……志乃さんがいいなら……」 「ケーキバイキング。なんつって。普通の飯でいいや、考えといて」 あぁ、これは利用されてるなーって。 都合のいい男認定されたなーって思ったのに、俺の心臓はそれと裏腹にドキドキしていた。 だって、店の外で志乃さんに会えるとか。 志乃さんから誘われた、とか。 志乃さんの手が俺の手をとって、自分のお腹に当てた。 「満腹。」 志乃さんがへへっと笑って、その声が耳を擽って少し痒かった。 |