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焼きそばパンももう4分の1ぐらいしか残ってない程に、志乃さんは食べ進めていた。


「意外ですよそりゃ……。そんなイメージなかった」

「まぁ……良く言われる」

「じゃあケーキとか好きなんです?」

「そうだな、好きだぜ。男一人でケーキ屋なんていけねーから滅多に食わねーけど」

「行ったらいいのに!なんかそこは志乃さんらしいや」


体裁をちょっと気にしちゃうところ。
男一人でケーキ屋、が恥ずかしいって思っちゃうとこが志乃さんらしい。
あ、恥ずかしいとは言ってないか。


「なんだそれ」

「なんとなくですよ。何ケーキが好きなんです?」

「なんでも好きだけどスタンダードな苺ショートが一番いいな。」

「俺はチョコレートケーキが好きです」

「うん、美味しいよな。分かるぜ」


最後の一口を食べた志乃さんが、俺を見て頷いた。
その目が、何故か俺を射抜いて俺はそのまま口を噤んでしまった。


「チョコレートケーキ、か。」


そう言った志乃さんが少しだけ俺に寄った。
どくっと心臓が鳴る。


「ありがとな、ハル。美味しかったぜ焼きそばパン。今度さぁ飯でも連れてってくれよ」

「お、れは……志乃さんがいいなら……」

「ケーキバイキング。なんつって。普通の飯でいいや、考えといて」


あぁ、これは利用されてるなーって。
都合のいい男認定されたなーって思ったのに、俺の心臓はそれと裏腹にドキドキしていた。

だって、店の外で志乃さんに会えるとか。
志乃さんから誘われた、とか。


志乃さんの手が俺の手をとって、自分のお腹に当てた。


「満腹。」


志乃さんがへへっと笑って、その声が耳を擽って少し痒かった。