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「んーー、じゃあこっち。」


俺が両手に惣菜パンを持ったままキュンキュンしていたら、志乃さんが俺の右手の上に乗っていたパンを取った。
そっち側には焼きそばパンが乗っていた。


「両方食べてもいいですよ?」

「んー、いい。そんなお腹すいてねーし。あー、でもこれは嬉しいぜ。」


パンの表面をおおっているラップをそのまま剥がしていく志乃さん。
丁寧に剥がすのではなく、少し雑に。
そのせいで少し手間をかけて、丁寧に開ける方が早く剥ける気がする。


「やりましょうか?」

「いーよ。お前は自分の食べるほう開けろって結構ムズイぞ」

「これがムズイって……簡単ですよ。」


裏のセロハンテープ留めてある部分を綺麗にとってから、そのままラップを取る。
志乃さんは未だに格闘しているけど、俺はあっという間に剥がしてしまった。

それを見て志乃さんは恨めしそうに、「ほう」と言った。

それがまた可愛くて、笑いたくなる。

年の割に幼いんだなこの人は。

俺が手を出したにも関わらず、そのまま強引にラップを開けてしまった志乃さんはそのまま焼きそばパンに齧り付く。

その時覗いた赤い舌に、思わず目が釘付けになりなる。

その舌はすぐに見えなくなってしまったのだけど、目の裏に焼き付いたように脳内に映し出される。


「何見てんの?」

「えっ?」

「俺の方、ずーっと見てるから、何かと思って」

「いえ、なんでもないですよ」

「なんだよこのむっつり。」

「だからむっつりって……」


別にそんなことを考えていたわけじゃないのに、そう言われてしまったら、自分がそう言う事を考えていたのかと思ってきてしまう。

俺はそれを誤魔化すように唐揚げパンに齧り付いた。

唐揚げは少し固くて、美味しいんだけど本当に惣菜って感じがした。

焼きそばパンの方が良かったかも。