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ガチャ、と音を立てて、開ける。


「志乃さー……ん」


ゆっくり、ゆっくり開けていけば、こっちの方に顔だけ向けて寝転がっている志乃さんがいた。


「志乃さん?」

「え?あ、うわ、ビビったお前か」


しかし、俺の姿を認めると言動とは裏腹に緩慢な動きで体を動かした。
そして、胡座をかいて座ると「ふぅっ」と猫背になった。


「手城かと思った」

「テシロ?」

「こっちの話。今日はまた随分早ぇな、まだ8時だぞ」

「今日は残業がなかったんです。」

「ふーん。それでこんなに早ぇのか、飲みにでも出たらいいじゃねぇか」

「居酒屋に一人ですか?」

「でもいーし、バーにでもいけば」

「嫌ですよ俺そういう所向いてない」

「……バーに向いてないとかいうくせに風俗には頻繁に通うってか。」

「あなたはすぐそういうことを言う……」


ヒヒッと笑う志乃さんを見て、俺はわざとらしく肩を落として志乃さんの近くに行く。

なんだかその顔を見て、胸の中が満たされるようないっぱいいっぱいになるような、そんな感覚を覚えた。

かわいいなぁ、なんて思ったりして。


「何持ってんの」


近くに寄ると、志乃さんは少しだけ俺が座りやすいようにしてくれた。
そして、志乃さんは俺が下げていたコンビニの袋を指差した。


「志乃さん、お腹空いてます?」

「うぅん、そうだなぁ。ちょっと」

「もうなにか食べたんですか?」

「いや、食べてねぇけど……。昨日の昼ぐらいからなんも食ってねぇから空腹を感じねぇ」

「え?!昨日から?どうして?!」

「どうしてって言われてもなぁー……」


志乃さんは何やら悩むようにんー……と首を捻ったけど直ぐにぐっと眉を顰めた。