3 ガチャ、と音を立てて、開ける。 「志乃さー……ん」 ゆっくり、ゆっくり開けていけば、こっちの方に顔だけ向けて寝転がっている志乃さんがいた。 「志乃さん?」 「え?あ、うわ、ビビったお前か」 しかし、俺の姿を認めると言動とは裏腹に緩慢な動きで体を動かした。 そして、胡座をかいて座ると「ふぅっ」と猫背になった。 「手城かと思った」 「テシロ?」 「こっちの話。今日はまた随分早ぇな、まだ8時だぞ」 「今日は残業がなかったんです。」 「ふーん。それでこんなに早ぇのか、飲みにでも出たらいいじゃねぇか」 「居酒屋に一人ですか?」 「でもいーし、バーにでもいけば」 「嫌ですよ俺そういう所向いてない」 「……バーに向いてないとかいうくせに風俗には頻繁に通うってか。」 「あなたはすぐそういうことを言う……」 ヒヒッと笑う志乃さんを見て、俺はわざとらしく肩を落として志乃さんの近くに行く。 なんだかその顔を見て、胸の中が満たされるようないっぱいいっぱいになるような、そんな感覚を覚えた。 かわいいなぁ、なんて思ったりして。 「何持ってんの」 近くに寄ると、志乃さんは少しだけ俺が座りやすいようにしてくれた。 そして、志乃さんは俺が下げていたコンビニの袋を指差した。 「志乃さん、お腹空いてます?」 「うぅん、そうだなぁ。ちょっと」 「もうなにか食べたんですか?」 「いや、食べてねぇけど……。昨日の昼ぐらいからなんも食ってねぇから空腹を感じねぇ」 「え?!昨日から?どうして?!」 「どうしてって言われてもなぁー……」 志乃さんは何やら悩むようにんー……と首を捻ったけど直ぐにぐっと眉を顰めた。 |