2 一等地よりだいぶ外れた場所にあるそこに行く。 ネオンがだんだんと少なくなっていく度に、俺の心臓は音を立て始め、なんだかそわそわとし始める。 今日は何を話そうか、何をしようか。 何があるかな、どんな志乃さんが見られるかな。 考えるだけで今日までのこと、明日からのこと全部どうでも良くなって、生きててよかったなんて思えてくる。 かなり大げさだけどほんとに。 俺は相変わらず外装がカラオケな、そこのドアをくぐる。 すると、受付でなにやらしていたボーイがさっと俺に頭を下げた。 そして、俺を認めると同時に「あ」という顔をして、すぐに何かをチェックし始めた。 「都ですよね?」 「あぁ、はい」 「空いてます。案内しますね」 どうやら俺のことを覚えていたらしい。 なんとなく気恥ずかしさを感じながら、こくこくと頷くとボーイはそのまま俺を志乃さんの部屋に案内する。 「こちらです」 といいながら、俺の前を控えめに歩く姿。 それを追いながら、見覚えのある内装に目を走らせる。 三回目になるとこんなに覚えてしまうものか……なんて思う。 なんだか常連になった気分だ。 常連になるともう自分の家みたいな感覚になってしまうのかも……。 「こちらです。入って大丈夫ですよ」 ボーイが、なんの合図もせずにそのままノブに手を添えた。 そしてすぐ離すと一礼して離れていってしまった。 ま、まじか。 初めて味わう感覚。 誰にも背中を押してもらわず、完全に自分のタイミングで入る感覚に、鳴っていた心臓が更にドキドキ鳴ってくる。 あぁ、どうしよう。 ドキドキしすぎて帰りたい。 でも帰ったら帰ったで後悔するんだろうなぁ。 ノブを握ったままでいたら、だんだんと手が湿ってきた。 じっとりと水でも掛けたのかというほど濡れてきたから、俺はぐっとそれを握ってハーーーと息を吐く。 よし、いくぞ |