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一等地よりだいぶ外れた場所にあるそこに行く。
ネオンがだんだんと少なくなっていく度に、俺の心臓は音を立て始め、なんだかそわそわとし始める。

今日は何を話そうか、何をしようか。
何があるかな、どんな志乃さんが見られるかな。

考えるだけで今日までのこと、明日からのこと全部どうでも良くなって、生きててよかったなんて思えてくる。

かなり大げさだけどほんとに。

俺は相変わらず外装がカラオケな、そこのドアをくぐる。
すると、受付でなにやらしていたボーイがさっと俺に頭を下げた。

そして、俺を認めると同時に「あ」という顔をして、すぐに何かをチェックし始めた。


「都ですよね?」

「あぁ、はい」

「空いてます。案内しますね」


どうやら俺のことを覚えていたらしい。

なんとなく気恥ずかしさを感じながら、こくこくと頷くとボーイはそのまま俺を志乃さんの部屋に案内する。


「こちらです」


といいながら、俺の前を控えめに歩く姿。
それを追いながら、見覚えのある内装に目を走らせる。

三回目になるとこんなに覚えてしまうものか……なんて思う。
なんだか常連になった気分だ。

常連になるともう自分の家みたいな感覚になってしまうのかも……。


「こちらです。入って大丈夫ですよ」


ボーイが、なんの合図もせずにそのままノブに手を添えた。
そしてすぐ離すと一礼して離れていってしまった。

ま、まじか。

初めて味わう感覚。

誰にも背中を押してもらわず、完全に自分のタイミングで入る感覚に、鳴っていた心臓が更にドキドキ鳴ってくる。

あぁ、どうしよう。
ドキドキしすぎて帰りたい。
でも帰ったら帰ったで後悔するんだろうなぁ。

ノブを握ったままでいたら、だんだんと手が湿ってきた。
じっとりと水でも掛けたのかというほど濡れてきたから、俺はぐっとそれを握ってハーーーと息を吐く。


よし、いくぞ