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結局隼也に弱みを握られた。
……まぁ、今更なんだけど。
あいつは何個も俺の弱みをしってる。
でもあいつもそれをネタに揺すってくることはない。
金持ちだから、そのへんそんなことしなくてもいいんだろうなぁ……とか思う。
普通なら、仕事やりたくないからあのネタで揺すって「やっといてくださいよ。」ぐらいのこと言いそうだが、あいつはそんなことはしなかった。

仕事に対しては真面目だし、嫌だのめんどくさいだのいうくせに、きっちりと真面目にこなす。
育ちがいいんだろうなぁ。

志乃さんと会って1週間。
そろそろ傷は全部治っただろうか、なんて思いながら、俺はコンビニにいた。

今日は隼也がいなかったおかけで残業をせずに済んだから、割と早く仕事を上がれた。
だから、志乃さんに会いに行こうかと思ったのだ。

何食べるだろう。
きっとお腹すいてるんだろうな。
俺だって空いてるし。

簡単に食べられるものがいいかもしれない。
じゃあ、ポテトとか唐揚げとか?
でも、冷めたら美味しくないものはやめたいなぁ。

俺はレジの隣の揚げ物コーナーの前でじっと、ケースを眺めていた。
いっそのこと、中華まんなんてどう?
急いで行って、ホイと渡せば。
あーー、でも空いてるとは限らないしなぁ。

えーと今日は、火曜日だっけ。
火曜日……かぁ……。


結局俺は、惣菜パンという超無難なものを手に取って、レジを通った。

コンビニの袋を引き下げ、夜のネオンの中に混じり込む。


流石に火曜日だからか、徘徊しているサラリーマンは少なかった。