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「そんなにいいんすか?その、元女優さんは」

「そんなんじゃないよ」


「彼」は女優なんかじゃないし。
なんて思っても、それこそブルーバスターのシノだよ。なんて言えるわけがない。
なんとか流す方法はないかと探ってみるけど、まぁ難しい。
俺って隠し事とか基本苦手なタイプだから、こういう時に困る。


「まだ言い逃れするんすかー?無理っすよ〜。誰なんすか?俺が知ってる人?」


しかも、隼也は勘が鋭いというか、こういう駆け引き的な話しをするのがうまい。俺はいつも結局喋ってしまう。


「……知ってるんじゃないの」


前、ポスターくれたし。
世代じゃないとはいえ、知ってるはず。
そういえななんか隼也、俺がブルーバスター好きって知った瞬間、俺が持ってるアルバム全部貸せとか言ってきたんだよなぁ。


「え?!ほんとっすか?!えー……誰だろ。分かんないや。教えて早川さん」

「教えると思うか」

「っすよねぇ……」


隼也はだいぶ考えるようにして、うーーんと唸りはじめた。
危ない。
ボロが出るとバレてしまう。
俺は細心の注意を払って隼也と会話しているせいで、大分作業のスピードが落ちてしまっていた。


「どんな人なんすか?おっぱいおっきい?」

「お前なぁ」

「うーん、締りがかなりいいとか」

「ここ女の人も居るんだからやめろ」

「んー……早川さんむっつりだからなぁ」


むっつりむっつりって、そんなに何度も言わなくていいだろ。
志乃さんもだけど、何かある度に引き合いにむっつりって出すのはやめて欲しい。
俺は割と普通だと思う。


「隼也、もう……ー」「相当入れこんでるんすねぇ。好きなんすか?」

「えっ」


隼也の言葉に思わず完全に作業をやめて、隼也を見る。

……そういえば……どうなんだろう。
いつの間にかそれを考えるのをやめていたことに気づいて、「あっ」となる。


「……え、マジすか」

「いや、そんなんじゃない……よ?」

「いやいや早川さん。風俗嬢好きになるとか……遊ばれて金搾り取られて終わりっすよ。」

「わ、わかってるよそんなこと」

「えーほんとっすかー?ねぇ早川さん。俺その人みたいなー3Pしようよ3P」

「お前なぁ、まだ18だろ」

「19っすよ!今年」

「変わらないよ。そんな年で行くとこじゃありません」

「早川さんだって25とかでしょ?変わんないよ」

「変わるでしょ?!しかも俺まだ23だし」


ふーん、風俗嬢かぁ、なんて言ってる隼也に、俺はそろそろ「仕事しろ」と肩を押した。
すると隼也は何かを考えるようにしながら、案外簡単に席を立った。


俺はこの時、隼也が見たこともないような真顔で唇に手を当てて俺を見ていたことを知らなかった。