2 無駄に広い風呂に入る。 一応俺は、会社の寮みたいなところに住んでいる。……まぁ……住んでいる、というか、「泊まっている」に近いんだけれども。 カラオケを改装したみたいなところが、一応俺が働くピンサロ。 いや、表向きはピンサロだけど、知る人ぞ知る本サロ。 花ビラ回転やら3000円とか謳っているけど、中に入ったらあらびっくり1万円からのメニューもありまーすって感じだ。 まぁ、この店自体少し特殊な場所になるから、入る人も少ない。 この店自体が知る人ぞ知る、って感じなんだけど。 俺だって働くときピンサロ風?って聞いたのに、ソープランドかというほどの設備を見てびっくりした覚えがある。 結局表書きがピンサロなだけで、なんでもするらしい。 出張はしないもののできることならなんでもするし、M感、売り専まで兼ね備えてるんだから、こんな店はなかなか少ないと思う。 まぁ、オネエはいないけど。 しかも、男は俺しかいないけど……。 俺は風呂場に入って、シャワーを捻った。 「ぅひっ……っ?!、び、びっくりした……ったく、びっくりさせんなよな……」 ぼうっとしていたせいか、水を出して一人で飛び上がる。 一人でシャワーに文句を言いながらゆっくりお湯を出す。 すっかり目が覚めてしまった。 顔を上げれば目の前にある鏡が目に入る。いつも思うんだけど風呂にかがみって必要なのか? 俺は自分の体を否応なしに見なきゃいけなくなるから、正直いらないと思う。 見てもいい体してねーし、不満しか出てこない体しかしてない。 それだけじゃない、場合によっちゃあ前の晩の記憶まで蘇ってくるから嫌なんだ。 貧相な体。 それは昔からだけれども、最近はもっと筋肉が落ちた気がする。 歌っていた頃はもっと、ちゃんと筋肉がついていた。 いつからだろう、男に嬲られて快感を与えられることを知った体は、メスのように変化している気がする。 できるなら、無職と名乗りたい。 女の家に転がり込んで身の回りのこと全部してもらってるヒモです。ってすげーカッコ悪いこと言ったっていい。 ぜってーそっちの方がいいだろ。 売り専やってますっつぅより。 そんなことを時たま考えながら過ごしていたら、気づけばもう風俗で働き初めて5年になっていた。 今日もちらりと鏡を目に入れれば、相変わらず貧相な体が目に入る。 しかし、それだけじゃなかった。 オプションに夥しいキスマークと傷が。 それを見てやっと思い出した。 そうだ、昨日はあの客が来たんだ。 |