1 目を覚ましたら、俺は服を着ていた。 ついでにいうと、与えられた部屋に寝かせられていた。 けど別にこれは特別なことではなく、割と日常茶飯事のことなので、俺は気にすることはしなかった。 ガンガンする頭。 俺はゆっくりと体を起こして直ぐにまた後ろに倒れ込んだ。 あーーーー、だるい。 なにもしたくねぇ。 煎餅みたいな布団に身を転がして、重い瞼を重力に任せて下ろす。 いつも思うけどクソきもちいい。 二度寝っつうのはどうしてこんなにも気持ちーんだろうか。 「都さん」 「んぁ」 最高に意識が微睡んだ時だった。 部屋の入口から声が聞こえて、俺の意識はすごい勢いで浮上した。 「あんだよ、ねみぃんだよ……」 「見たらわかりますよ。一応昨日のこと話しとこうと思って。ついでにいうともうすぐ出勤ですよ。」 「あーーーー……?もうこっから1分歩けば仕事場なんだからぎりぎりまで寝てもいーだろ」 「お風呂ぐらい入ってくださいよ」 「入れてくれよ……なんだよ風呂入ってねーのかよ」 「意識無いあんた動かすのどれだけ大変か分かってるんですか」 黒子をやっている手城が俺の前で突っ立ったまま、ぶつくさと文句を並べていく。 寝起き早々愚痴紛いのことを言われるとは思ってなかったから、あーーもう、めんどくせぇな、と身動ぎする。 けど、風呂入ってない割には体が綺麗な気がする。 いつもは風呂入ってないと体中がギシギシする気がするのに、今日はそれがない。 「俺超お利口さんだろ?」 「どこが!!殴ってきますからねあんた!ひどい時なんてケリが飛んでくる!」 「あーあーあー、ったまいてーんだよ……響く……どうせお前俺以外だったら風呂入れてやるくせに……この女好きめ……風呂だりー……」 「重さが全く違いますからね。目の保養的な意味でも違いますし」 「うわーーそれをあいつらに聞かせてやりてーー」 ゆっくりと体を起こして、がしがしと頭を掻く。 あー……たしかに、少し汗臭いし匂いが残ってる気がする。 俺が腕やら体を嗅いでいたら、手城が俺の前に腰を下ろして着替えの服を差し出してきた。 「昨日のお客様、都さんの彼氏さんとかなんですか?」 「は?彼氏?なんで?」 俺はそれを受け取りながら、眉を寄せる。 意味わからんことを言うな。 「え?だって、昨日あの人が帰ってから部屋を見に行ったら都さん、毛布にくるまれてましたよ?」 「……なんか死体みてぇ……」 「あのねぇ」 そういえば昨日の最後の客誰だっけ。 それすらも思い出せてない俺は、そのままフラフラと立ち上がると「あーーー」と声を出しながら、風呂を目指した。 |