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目を覚ましたら、俺は服を着ていた。
ついでにいうと、与えられた部屋に寝かせられていた。
けど別にこれは特別なことではなく、割と日常茶飯事のことなので、俺は気にすることはしなかった。

ガンガンする頭。

俺はゆっくりと体を起こして直ぐにまた後ろに倒れ込んだ。

あーーーー、だるい。
なにもしたくねぇ。

煎餅みたいな布団に身を転がして、重い瞼を重力に任せて下ろす。

いつも思うけどクソきもちいい。
二度寝っつうのはどうしてこんなにも気持ちーんだろうか。


「都さん」

「んぁ」


最高に意識が微睡んだ時だった。
部屋の入口から声が聞こえて、俺の意識はすごい勢いで浮上した。


「あんだよ、ねみぃんだよ……」

「見たらわかりますよ。一応昨日のこと話しとこうと思って。ついでにいうともうすぐ出勤ですよ。」

「あーーーー……?もうこっから1分歩けば仕事場なんだからぎりぎりまで寝てもいーだろ」

「お風呂ぐらい入ってくださいよ」

「入れてくれよ……なんだよ風呂入ってねーのかよ」

「意識無いあんた動かすのどれだけ大変か分かってるんですか」


黒子をやっている手城が俺の前で突っ立ったまま、ぶつくさと文句を並べていく。

寝起き早々愚痴紛いのことを言われるとは思ってなかったから、あーーもう、めんどくせぇな、と身動ぎする。

けど、風呂入ってない割には体が綺麗な気がする。
いつもは風呂入ってないと体中がギシギシする気がするのに、今日はそれがない。


「俺超お利口さんだろ?」

「どこが!!殴ってきますからねあんた!ひどい時なんてケリが飛んでくる!」

「あーあーあー、ったまいてーんだよ……響く……どうせお前俺以外だったら風呂入れてやるくせに……この女好きめ……風呂だりー……」

「重さが全く違いますからね。目の保養的な意味でも違いますし」

「うわーーそれをあいつらに聞かせてやりてーー」


ゆっくりと体を起こして、がしがしと頭を掻く。
あー……たしかに、少し汗臭いし匂いが残ってる気がする。
俺が腕やら体を嗅いでいたら、手城が俺の前に腰を下ろして着替えの服を差し出してきた。


「昨日のお客様、都さんの彼氏さんとかなんですか?」

「は?彼氏?なんで?」


俺はそれを受け取りながら、眉を寄せる。
意味わからんことを言うな。


「え?だって、昨日あの人が帰ってから部屋を見に行ったら都さん、毛布にくるまれてましたよ?」

「……なんか死体みてぇ……」

「あのねぇ」


そういえば昨日の最後の客誰だっけ。

それすらも思い出せてない俺は、そのままフラフラと立ち上がると「あーーー」と声を出しながら、風呂を目指した。