5 なぜここにシノが居るのか。 シノはバンド活動をしていた時、いつも黒のシャツに黒のスキニーパンツだった。 小柄で中性的な顔立ちをものともしないようなかっこよさで、バンドメンバーの誰よりもかっこよかった。 男らしいを第一に優先するようなパフォーマンスや、身なりをしていたのに。 どうして今はこんなことをしているんだろう。 まるで、女の真似事みたいなこと。 昔とは似ても似つかないような白のニット。 しかもシノのサイズよりもふたサイズほど大きそうなサイズ。 そのせいで男らしい体はまるで隠れてしまっていて、しかも胸元がざっくりと見えていて胸がなくてもそれでいやらしさが出ている。 髪も少し伸びたせいで、項や横顔にかかる髪の毛からは危ない色気が。 言ってもいいのかわからないけど、シノの欲しがっていた魅力とは全く違う方向に磨かれてしまっている気がする。 「いただきまーす」 同じハイボールを作ったシノは、俺のグラスにグラスを当てた。 そして、俺がひとくち口に含むと、そのまま俺を見ながらグラスを唇に当ててグラスを傾けた。 その仕草に思わず喉を鳴らしてしまう。 まるで、煽るような飲み方。 そしてそのままごくごくとのどを鳴らす。 バンドで活動していた時も思っていたけれど、シノの喉仏はとてもエロいと思う。 それをわかっていてしているような飲み方。 ごくり、ごくりと飲み物を胃の中に運ぶたびに動く喉仏は、同じ男でも触りたくなってしまう。 ていうかハイボールをそんなふうに飲む人を初めて見た。 「飲まねーの?」 「俺酒弱いんです」 「は?マジか。」 「次飲んでいいですよ」 「あ、ほんと?じゃあもらう。さーんきゅ」 お酒に強いのだろうか。 シノはもう一度同じのを作ると、俺のグラスにまたコツンと当てて、グラスの半分ほどをまた飲んだ。 俺はそんなシノの姿を見つめる。 下には何も着てないのかと思っていたが、トランクスを履いているらしい。 チラチラと裾が見えている。 けれど、ニットの下から見える生足は白くて綺麗だ。 思わず目を逸らしてしまうほどに。 |