7 キス待ち顔の志乃さん。 昔から言われているけど、志乃さんはなかなかの美形だ。 目の周りをぐるっと囲むまつげ。 通った鼻筋、薄い唇。 特別整っているとはいい難いけれど、あの華やかな世界でも見劣りしない程度には整っていると思う。 そんな顔に加えて、今はイったあとだからか半端ない色気が放たれている。 それは間違いなく志乃さんの魅力を倍増していて、俺はまたクラクラとしそうなほどに、その魅力にやられてしまう。 「志乃さんはずるい」 「んー?」 「あなたはずるい人だ。」 その唇に少し強めに唇を押し当てたら、食むようにちゅ、ちゅと返される。 そのなんとも言えない、性を孕んでないキスの仕方が、余計に俺を掻き立てる。 志乃さんの体を抱き寄せてから、さらに唇を押し付けていく。 「ん、」とくぐもった声を出した志乃さんが、俺の唇をぺろっと舐めて唇を離した。 「志乃さん」 口を話すと同時に目を開けたら、志乃さんとバッチリと目が合う。 ドキッとしながら、その目をジッと見つめると、ふとその目は細くなった。 「へへ、ハル。」 「志乃さん?」 「俺、ほかのどんな客よりもお前が一番好きだ。ハル」 とろん、とした目でそう言われて「本当ですか?」なんて聞き返そうとしながら、頬が緩んで…… ん?ちょっと待ってなんて? 「え?志乃さん?」 「んー……」 「志乃さん?!志乃さん?!」 なにかすごい言葉を俺は聞き流そうとしてしまった気がする。 今、俺の事好き、好きっていったよな? 俺にそういったきり急に重くなった志乃さん。 え、まって、と思う間もなく志乃さんの目は伏せられて、あの黒の瞳もまぶたに隠れてしまった。 「え、あ……まじか……落ちた……」 どくどくと心臓が鳴っている。 俺は胸の中で眠る志乃さんを見つめたまましばらく放心していた。 |