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キス待ち顔の志乃さん。
昔から言われているけど、志乃さんはなかなかの美形だ。

目の周りをぐるっと囲むまつげ。
通った鼻筋、薄い唇。
特別整っているとはいい難いけれど、あの華やかな世界でも見劣りしない程度には整っていると思う。

そんな顔に加えて、今はイったあとだからか半端ない色気が放たれている。
それは間違いなく志乃さんの魅力を倍増していて、俺はまたクラクラとしそうなほどに、その魅力にやられてしまう。


「志乃さんはずるい」

「んー?」

「あなたはずるい人だ。」


その唇に少し強めに唇を押し当てたら、食むようにちゅ、ちゅと返される。

そのなんとも言えない、性を孕んでないキスの仕方が、余計に俺を掻き立てる。

志乃さんの体を抱き寄せてから、さらに唇を押し付けていく。

「ん、」とくぐもった声を出した志乃さんが、俺の唇をぺろっと舐めて唇を離した。


「志乃さん」


口を話すと同時に目を開けたら、志乃さんとバッチリと目が合う。
ドキッとしながら、その目をジッと見つめると、ふとその目は細くなった。



「へへ、ハル。」

「志乃さん?」

「俺、ほかのどんな客よりもお前が一番好きだ。ハル」


とろん、とした目でそう言われて「本当ですか?」なんて聞き返そうとしながら、頬が緩んで……

ん?ちょっと待ってなんて?


「え?志乃さん?」

「んー……」

「志乃さん?!志乃さん?!」


なにかすごい言葉を俺は聞き流そうとしてしまった気がする。
今、俺の事好き、好きっていったよな?
俺にそういったきり急に重くなった志乃さん。
え、まって、と思う間もなく志乃さんの目は伏せられて、あの黒の瞳もまぶたに隠れてしまった。


「え、あ……まじか……落ちた……」


どくどくと心臓が鳴っている。
俺は胸の中で眠る志乃さんを見つめたまましばらく放心していた。