6





俺はそのまま主張するところには手を触れなかった。
志乃さんも、それについて咎めてくることはなくて、そのまま俺とは目を合わさないようにどこかほかのところを向いていた。

散らばる赤い跡に、傷。
腹部には薄ら痣がある。

痛々しいと言う前に、少し綺麗にも見えてしまって、俺はこの傷をつけたヤツの気持ちがわかったことに舌打ちをしたくなった。

確かに白い肌に映えるのかもしれない。


「っン……」


俺はゆっくりと首筋の方から口づける。
跡を拭うように舐める。

舐めては、ちゅ、と吸いつく。
吸いつく、と言ってもそれは痕が付く程度ではなくて、軽く、少し。


「は、……ぁ……」


俺も意識してないといえばウソになるけど。
志乃さんの体はふるっと震えて、時々ぴくんっと跳ねる。

熱っぽい息が、やけに耳にまとわりつく。



「志乃さん、声がエロいですよ……」

「それ、消毒じゃねぇだろ……」

「消毒です、ここ。」


こちらに目線をやって、舌打ちしそうな勢いの志乃さんを見上げながら、かさぶたになってしまっている傷口を舐めあげる。

傷口は敏感なのかな。

志乃さんは瞳の淵を潤ませて、ハスキーな声で「あ」と言った。


「は、ぁ……」


するすると体を撫でる。
主張している淡いピンクの突起は無視して、痣を撫でたら、明らかに眉を寄せて不満そうにする姿が可愛い。


「そんな煽り方もできるんですね、志乃さん」

「煽ってねぇ……お前が煽ってるんだ」

「そんなつもりは微塵も」

「この、むっつり、エロじじい」

「じじいっていうなら志乃さんはどうなるんですか。」

「することがじじいなんだよ……」


言い返そうとしたら、志乃さんの手がにゅっと伸びてきた。
え、と思うまもなく志乃さんは、俺の手首を掴む。
そしてそのまま自分の胸の方まで手を誘導すると、目を細めた。


「もういいから、触れ。」