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「えっとじゃあ…ハイボール…」

「お、いいねぇ。角でいい?」

「あ、はい。」


シノ。
シノだ。シノがいる。
俺らの神、シノ。

思わず夢見心地になりながらシノを眺める。
確かに、今、目の前にいるシノは廃れてしまっているけど、シノには変わりない。

BLUEBUSTERのshino。
彼は華奢な体から出るとは思えない、迫力ある声を出すのが特徴だった。
それに加えて、あり得ないほどの音程生確率と、美しいビブラート。
ロックからバラードまでなんでも歌いこなす天才で、そんなシノを軸に回るブルーバスターはカバーからオリジナルまでしていたバンドだった。
基本はロックだったけど、でも俺はシノの歌声に酔いしれることができるバラードも好きだった。

トレードマークの金髪は変わらず、でもあの時よりも少し歳をとった顔。
少し長くなった髪が不意に顔にかかって、あの時よりも色気が増したように感じる。

しかし、ブルーバスターは、五年前に活動を停止して、解散した。
理由は明らかになってない。
けれど、突然のこと過ぎてあの時はショックで泣いたのを覚えている。

氷をアイスピックで割るシノ。
その手つきは手馴れたもので、次にウイスキーを入れるとソーダ水を注ぐ。
マドラーでくるくると混ぜて、渡された。


「はーいどうぞ。俺ももらっていい?」

「あ、どうぞ」

「じゃあ同じのもーらいっと」


音をつけるなら「ニヒッ」そんな調子で笑うシノ。俺は、今まで見たことのなかったその顔に意外性を感じるとともに、どうしてシノがここにいるのか、気になってきていた。