4 「えっとじゃあ…ハイボール…」 「お、いいねぇ。角でいい?」 「あ、はい。」 シノ。 シノだ。シノがいる。 俺らの神、シノ。 思わず夢見心地になりながらシノを眺める。 確かに、今、目の前にいるシノは廃れてしまっているけど、シノには変わりない。 BLUEBUSTERのshino。 彼は華奢な体から出るとは思えない、迫力ある声を出すのが特徴だった。 それに加えて、あり得ないほどの音程生確率と、美しいビブラート。 ロックからバラードまでなんでも歌いこなす天才で、そんなシノを軸に回るブルーバスターはカバーからオリジナルまでしていたバンドだった。 基本はロックだったけど、でも俺はシノの歌声に酔いしれることができるバラードも好きだった。 トレードマークの金髪は変わらず、でもあの時よりも少し歳をとった顔。 少し長くなった髪が不意に顔にかかって、あの時よりも色気が増したように感じる。 しかし、ブルーバスターは、五年前に活動を停止して、解散した。 理由は明らかになってない。 けれど、突然のこと過ぎてあの時はショックで泣いたのを覚えている。 氷をアイスピックで割るシノ。 その手つきは手馴れたもので、次にウイスキーを入れるとソーダ水を注ぐ。 マドラーでくるくると混ぜて、渡された。 「はーいどうぞ。俺ももらっていい?」 「あ、どうぞ」 「じゃあ同じのもーらいっと」 音をつけるなら「ニヒッ」そんな調子で笑うシノ。俺は、今まで見たことのなかったその顔に意外性を感じるとともに、どうしてシノがここにいるのか、気になってきていた。 |