1 体中に散らばる切り傷。 首を絞められた跡。噛み跡。 腹部には軽く痣まである。 「ハル、痛い」 その跡を拭いたくて、爪を立てる。 剥がれてしまいそうだと思う。 いっそ剥がれてしまって欲しい。 「ハル、いたいって」 爪の食い込んだ所の色が変わる。 黄色くなって色が無くなっていく。 「ハル!!いてぇ!!!」 志乃さんの大声に体がびくんっと跳ねて、手を離す。 志乃さんの首には爪痕がくっきりと着いていた。 「わ、わ……ご、ごめんなさい」 「ってー……何されるのかと思った」 「剥がれそうで……」 「剥がれるわきゃねーだろ」 「そうなんですけど……」 少し機嫌を悪くした志乃さんが、首を擦る。 「別料金だぜ。一応商品だからな」 「いくらなんですか?」 「さーあ。俺はよく知らねぇけどSMは高いぜ」 つけてしまった爪の跡をそっと撫でる。 すると、志乃さんはぴくんっと震えて、俺の手をやんわりと拒否した。 「俺、痛いの嫌い」 「嫌いなのにこんなにさせたんですか」 「……うるせぇ。お前には分かんねーよ。」 くるっと寝返りをうった志乃さん。 俺の目の前に広がる背中には、一際大きな傷がある。 まだ血が出ていて、傷が塞がりきってない。 「志乃さん、消毒しましょ」 「はぁ?」 「だってしてないでしょ?」 「しなくたっていい、いつもしねーから」 「じゃあ、俺がしたいからします。見てられないんですもん。」 |