4 白いあの服を着ていないと、あの時の彼に近い気がした。 「そういえば、聞きました。ミヤコシノって言うんですね」 「あー……本名?」 「はい。」 「簡単だろ?都に、志に、ありきたりな、乃」 「へぇ、漢字までは知りませんでした。」 「ほら、水」 ずいっと差し出されたそれを慌てて受け取る。 中で揺れた水が少しかかった。 「志乃……なんかいいですね」 「女みたいだろ」 「どうして?なんか似合ってる」 「そうかぁ?俺は外見的にシノブとか良かったと思うけどなぁ」 「シノブ……確かにそれも似合いますね」 あぁ、いい。 この、満たされる感じ。 他愛もない会話をしながら、俺は体が満たされていくのを感じていた。 体を繋げることが全てじゃない。 この、ゆったりと満たされていく感じ。 たまらない。 「んー……お前の名前の漢字とか聞きたいけど、多分忘れるからなぁ。やめる」 「忘れたっていいです。何回だって教えます」 「……え?」 「え?」 突然、志乃さんが驚いたような顔をしたから、俺も驚いて聞き返す。 何かまずいことでも言ったかな。 そう思ったら、志乃さんはふはっと息を吐き出して、あの誘ってくるような目で、くくくっと笑った。 「そうかぁ、何回でもなぁ。そんなに来る気だったんだ、お前。」 「あっ……」 「おもしれーなー。俺お前みたいなの好きだぜ。かわいい」 志乃さんが、俺の頬に手をやってへにゃっと笑った。 その顔が前回とは違う顔で、また、新しい顔を知ってしまったのだと思った。 |