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白いあの服を着ていないと、あの時の彼に近い気がした。


「そういえば、聞きました。ミヤコシノって言うんですね」

「あー……本名?」

「はい。」

「簡単だろ?都に、志に、ありきたりな、乃」

「へぇ、漢字までは知りませんでした。」

「ほら、水」


ずいっと差し出されたそれを慌てて受け取る。
中で揺れた水が少しかかった。


「志乃……なんかいいですね」

「女みたいだろ」

「どうして?なんか似合ってる」

「そうかぁ?俺は外見的にシノブとか良かったと思うけどなぁ」

「シノブ……確かにそれも似合いますね」


あぁ、いい。
この、満たされる感じ。
他愛もない会話をしながら、俺は体が満たされていくのを感じていた。
体を繋げることが全てじゃない。
この、ゆったりと満たされていく感じ。
たまらない。


「んー……お前の名前の漢字とか聞きたいけど、多分忘れるからなぁ。やめる」

「忘れたっていいです。何回だって教えます」

「……え?」

「え?」


突然、志乃さんが驚いたような顔をしたから、俺も驚いて聞き返す。
何かまずいことでも言ったかな。

そう思ったら、志乃さんはふはっと息を吐き出して、あの誘ってくるような目で、くくくっと笑った。


「そうかぁ、何回でもなぁ。そんなに来る気だったんだ、お前。」

「あっ……」

「おもしれーなー。俺お前みたいなの好きだぜ。かわいい」


志乃さんが、俺の頬に手をやってへにゃっと笑った。
その顔が前回とは違う顔で、また、新しい顔を知ってしまったのだと思った。