2 さっきまでヤっていたから、なのだろうか。 シノの対面に座った俺は、シノから放たれる言いようのない色香を感じていた。 さっきよりも鮮明に見える顔、体。 一週間ちょっとの間だというのに、もう1年ほど会わなかったような錯覚を覚えた。 「俺の名前、覚えてたんですね」 「んー、あんだけうまかったら、なぁ?」 へっへっとイタズラっぽく笑うシノ。 その顔が可愛いとか思ってしまって、目を逸らした。 「来たんだな。まー……くるとは思ってたけど意外に速かった」 「どういうことですか、それは」 「俺のこと、好きになったろ?」 せめて服を着てくれないかなぁ。 逸らしていた目線にくっきり合うように目線を合わせてきたシノに、眉を下げる。 好きになったろ?って、その言葉で俺は好きになってしまうような気がした。 シノが好きなのか、それとも、shinoが好きなのか。 その前に俺は、彼が好きなのか。 絡んでくる視線に、俺は動揺するしかなくて、シノの目以外の部分に目を走らせた。 すると、目から頬までのラインに何かが伝ったような跡が見えた。 ……これは、 「あれ、シノさん」 「んー?」 「泣いた……?」 思わず頬に手を伸ばす。 そのラインに指を添わせて、擦るように拭えば、その跡は簡単に消えた。 よく目を見れば、目尻が赤くなって瞳の周りが少し充血している。 小さい顔。 少し血色の悪い唇が開閉して、目が見開かれた。 綺麗な黒だと思う。 「お、まえ……」 金髪が揺れる。 じっと見つめたら、シノは瞳を揺らした。 初めて見るその姿に、俺の心臓はドクンっと音を立てた。 頬に添えた手に思わず力が入りそうになる。 そのまま目を逸らすこともできず、見つめていたら、シノが俺の唇に唇を当てた。 「っん、?!」 柔らかい感触に、今度は俺が目を見開く。 「ははは、ちけーんだもん。」 唇を離して、俺の唇をふにっと人差し指で押してくる。 そこで俺の頬はカッと熱くなって、あぁ……と目を逸らした。 きっとこれは、聞かないで欲しいんだろうな。 |