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「……誰かと思った」


ドアを開けば、そこには上半身裸のシノが居た。
鈍い光を放つ金髪、俺の頭の中にあるよりもずっと色気を放つ体がそこにあって、俺は少しだけクラっとした。
あまり音が気こえてなかったのか、少しあっけに取られた顔をしている。


「どうしたんです、それ」


けど、続いて俺の目に入ったのは、まゆを寄せざるを得ないシノの体だった。
高揚仕掛けていた気分もすぐに下降し、胸がざわつく。
しかし、シノはなんでもないことのように、こちらを見ながら首の後ろを掻いた。


「予約入ってねーから、もう今日は誰もいねーんだと思って……好きにさせちまった。なんだ、来るならもっと綺麗にしてたのに。つーかここまでさせなかった」

「それは全然いいんですよ。そうじゃなくて、痛くないんですか。今日中には消えないでしょ。」


白の首にあるのは、明らかに首を絞められたとわかる手の跡。
そのほかにも、キスマークや歯形、しまいには切り傷まである。
一応部屋は綺麗にしてあるけど、シノは疲れているのか壁に寄りかかったままだ。


「まー……消えねぇだろうなぁ……」

「消えないって……」

「しゃあねぇ、仕事だから」


傷口を見て、指先でそれをなぞるシノ。
ぴくんっと動いた肩から、痛みを感じたことがわかった。
なんだか無性に、それに胸がしめつけられる。


「……、なんでもさせるって、本当だったんですね」

「ん?」

「聞いたんです、割となんでもいいって。SMとかでもするって」

「なに、興味あんの?」

「そうじゃなくて……」


痛々しい。
そんなにまで、ならなきゃいけないのが、無性に腹立たしくて、イライラしてしまう。


「立ってんのも疲れたろ。こっちこいよ、ハル」

「シノ、さん。」


シノが手招きするのを見て、俺は靴を脱ぐとそっとまだ遠目ではよくわからなかった彼に近寄った。