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居るのかな、なんて考えながら腕を組む。

帰るなら今だよなぁ。
……、はぁ……。

外装は本当にカラオケ。
なんでこんなカラオケみたいなとこなのかっていうと、多分あんまり人を寄せ付けたくないからだと思う。

元芸能人だし、おおっぴらになるといろいろめんどくさいんだろう。

まんまカラオケの癖に、変に電飾をつけてるからなんかもう、なんとも言えない怪しい雰囲気が出ている。

わざわざ自動ドアを手動ドアに取り替えちゃったりして。

俺は、ゆっくりとそのドアを押した。


「いらっしゃいませ……お一人様、ですか?」


中は少し薄暗い。
オレンジの明かりがほんのりと辺りを照らしていて、お互いの顔ははっきりと見えない。
俺は、少しだけ頷くと、そのままボーイのいる方に向かう。
前の彼と違うのかと思ったけど、前の彼を覚えてない。


「会員証はお持ちですか?」

「あぁ、いえ。」

「初めてですか?」

「いえ。」

「では、前回は」

「連れの紹介です。」


誰かに見られてないだろうか。
なんて変な心配をしながらそわそわする。
けど、周りを見渡す勇気もない。
早く終わらせてしまいたくて、俺は質問をブツブツと切りながら回答していく。


「わかりました。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「えっ」

「本名じゃなくても結構です。店の方で呼ぶ名前なので」

「あぁ、じゃあ……ハル……遥幸で……」

「わかりました。遥幸様ですね、本日はご希望の子とかいらっしゃいますか?」


ドクッと、心臓が鳴る。
顔写真がならんだそこに目を向けることもなく、俺は変な位置に視線を飛ばしながら口を開いた。


「シノ、で」

「わかりました。都志乃ですね。」

「みやこ……しの……」