3 休みをもらったって、家に居ても結局彼のことを考えるだけだ。 一人で吐き出したって、この熱は燻ることしか知らない。 ずっとずっと、コイツの解消の仕方はひとつしかないことはわかってるけど、背徳感が俺にそれを実行させようとしなかった。 シノに会いにいくとはつまり、そういうこと。 自分から、行く。 そういう場所に、行ってしまう。 その線を超えるのが、俺にとっては難しくて、いつも悩んだ末にそのまま家に帰っていた。 今日だって、そのつもりだった。 けれどやっぱりいつまでもこのままで居るわけにも行かなくて、いつもなら大笑いして、涙まで流してしまうバラエティ番組を真顔で見終わった俺はテレビを消した。 そしてそのまま、部屋の電気をすべて消して、家を出た。 「はぁ……。」 夜の街は、気が重い。 どうも自分に合ってない気がする。 「お兄さん、一杯、どう?飲み放題あるよ?」 「すいません」 「そんなこと言わずにさ、どう?明日仕事?」 キャッチの若いお兄さんが、にこにこしながら俺に話しかけてくる。 顔はニコニコとしているけど、目が笑ってなくてなんだか怖い。 必死なんだな。 きっと、引き込む人数によって給料が変わるんだ。 シビアだな、なんて思いながら手を振る。 俺の気持ちはどんどん沈んでいく。 煌びやかな世界とは裏腹に、期待する体とは裏腹に。 短いドレスに、3歩あるいたら転けそうなヒール。 楽しそうな笑い声。 通り過ぎて、もっともっと奥へ。 明かりが姿をどんどん消していく。 けれど、未だに消えないその雰囲気は、この区域を出ない限り続くんだと思う。 ビルが立ち並んで、看板には明かりがついている。 平日の午後12時。 もう、日にちが変わっていた。 俺は、あるビルの前に立ち止まって、上まで見上げた。 |