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ブルーバスター
【File 2-3】ギャップ


隼也にもらった、というのは癪だけど、俺の機嫌は朝に比べるとだいぶ良くなっていたと思う。

いつもはひとりで仏頂面でしている残業も、何となくいつもより捗った気がした。

終電で家に帰って、朝以来見ていなかったブルーバスターのポスターを広げた。

わっかいなぁ……シノ。
このポスター当たらなかったんだよなぁ。

この時ブルーバスターは人気絶頂期だった。
多分二枚目のシングルだった気がするけど、店に長蛇の列ができたことで有名だ。


「……あ、これこれあった」


その時買ったのがこれ。
俺も並んで買ったっけ。
初回限定盤はなんとか手に入れたけど、抽選で当たることはなかった。

俺はブルーバスターの象徴である青いディスクケースを開いて、黒のCDを取り出す。
愛用のコンボにセットして、再生ボタンを押した。

『High limit』

たしか初めてのバラードだった気がする。
ギターとベースの音とドラムの音。
耳慣れた音に安堵する。

なめらかな英語に、響く重低音。
頭の中にあるライブ映像に音声を当てていくように聞くと、うっとりと気分にひたれる。

いつもなら、それだけ、なのに。


「I do not arrive.Do not arrive.Thought to melt hot」


チラリと覗く赤い舌。
うっとりと陶酔するように細めた目。
感情の高ぶりを表す手。

その舌が俺を這う。
その目が俺だけを射止める。
その手が、俺を慰める。


「The thought without the going place smokes.I surround a whirlpool in my chest.」


なめらかな旋律を奏でる喉が、俺の愛撫で音を出した。
聞いたこともなかったあの声。

ポスターに居る彼はあんなにもかっこよくて、男らしくて、人に媚びる様なんて知らなそうなのに。

白い太ももを見せて、シノはメスのように犯されて、それに悦びを感じていた。
この声の主が。
あの写真の男が。