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画面の文字をふと読み返したら、全く違う文章を打っていて慌てて消す。
それを知ってか知らずか隼也は、俺を見て笑っている。


「だってスケベな顔になってたっすよ」

「なってないよ」

「自分で気づかないだけだ。なにしたの?どんなプレイ?なんかいろいろできるみたいっすね?」

「結構聞いてるんじゃないか」


何を課長は喋ったんだよ。


「ソフトSMメインらしいっすけど。言ったら3Pとかもできるみたいっすね」

「はぁ?」

「サンドイッチ」

「お前なぁ」

「その女優さん早川さんと一緒に抱きたいなぁ」

「お前仕事しろ」

「あ、今絶対考えたっすよね?」

「あーーもう!集中できない!!ちょっと掃除してきて!!」

「えー?!掃除は俺の仕事じゃない!」

「黙ってする!」


早川さんむっつりだ。なんてブツブツいいながら離れていく隼也をみて、どっと疲れが押し寄せる。
頭の中ではずっと昨日のアレが途切れ途切れに再生されてて、もういっぱいいっぱいだった。
後半はキーボードを叩くスピードもだいぶ落ちてたし。

ていうかあいつはなんてことをいうんだ。
あの年にしてなんでそんなハードな事をいうんだ。
まだ19だろ?
……はーーー。
疲れた。

「掃除してるの?」
「そうなんすよぉ」
「私がするよ?」
「いーんすよ、早川さんに言われたんで。早川さんの命令はゼッターイ」
「ふふ、仲良いね」

なにがいいもんか。
後ろで繰り広げられる会話にげっそりする。


「あ、そういえば早川さん」

「なに。掃除終わったの?」


そう思っていたら、後ろから声がする。
まさか終わったはずがないと思って振り返ったら、箒と何か紙の丸めたものを持っている隼也がずいっと手の中のそれを差し出してきた。


「まさか。これ、早川さんにあげる。大好きなブルーバスター」

「……っな」


ブルーバスター。
と聞いて俺は直ぐにその丸めてある紙を開いた。


「俺ん家にあったの。」

「これ初回限定盤についてた抽選券で10人にしか当たらなかったプレミアポスターじゃん!!」

「そんなにいいものなんすか?」


おなじみの黒いシャツを着て、こっちを睨むような目線を送って来ているのはシノ。
昨日と同じ金髪で、昨日より若い顔。

その姿を見て、俺の顔はまたカァッと熱くなった。