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着いたその場所はいつものようにきらびやかな場所ではなかった。
光が落とされて、どこも光ってないその建物は今すぐ魔物に化けて、俺達を食べてしまいそうだ。


「開いて……ないね。当たり前か。」


入口は閉まっていた。
どうやって中に入ればいいかわからない。
苛立ち混じりに何度もガチャガチャとしていると、中から女の人が顔を覗かせた。


「うるさいな……なぁに。営業終わってるんだけど。ボーイもいないでしょ?」

「あぁ、えと、中に用があって」

「あのねぇ、用があるって言われたって入れるわけないでしょ??」


化粧をしているバッチリな顔。
赤い唇を動かしながら、服を着直すその女の人。
香水の臭いがとてもキツい。


「あの、志乃さんの」

「なに、あんたイケメンじゃん?と思ったらゲイなの?その隣の子も?」

「えっと……」

「やぁーも。あの子に客どんどん取られてくの。みんなホモよ。まったく。志乃がなに?志乃ならなんか、時間外業務中よ。なんでも大金持ちに買われたんだって。」


女の人が嫌悪感を顕にしながら話す。
志乃さんの悪口もいい、その大金持ちに用があるんだよ俺らは。
どうしよう。
どうしたって突破できない。
だってそうだよな。
突然風俗に来て入れろっつったって入れるわけがない。


「私楢崎家のものです。その志乃さんを買った張本人の関係者なのですが、入れてはもらえないでしょうか。」


そう思っていたら千尋くんが口を開く。
女の人は少しだけ目をぱちくりさせるとんー、と口を結んだ。


「入れてもいいのかな……でもその名前を知ってるってことは関係者ってことよね……。んー……ねえ、私が入れたって言わないでね?」

「入れてくれるんですか?」

「秘密よ。その代わりあんたたちが何をしても、どうなっても責任は取らないわ」


女の人は顔を少し不機嫌にさせると、扉を大きく開けてくれた。
俺達は中に踏み込んだ。