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ぞろぞろと入ってきた男。
そのどれもが俺の見覚えのない男だった。

舌なめずりをして、まるで獲物を捕食する肉食獣のような目をしている男たち。

俺は恐怖を感じながら一歩下がった。

志乃もそれは同じなのか体を起こして後ずさると引き攣った顔をしている。


「久々だねぇシノくん。」


男の1人が耳にまとわりつくような声で言う。
その声に志乃は顔を歪めながら、その顔を背けた。


「これは……」


状況がつかめない。
けれど、ジンが出てきた時よりも怯えているようだ。
思考が追いつかず混乱している俺は、思わず口に出してしまっていたのか、隣の男が嘲笑する声を聞いてハッとする。


「彼の客ですよ。」

「客?」

「ええ、無料で好きにできるチャンスがあるかもしれないって餌をばらまいたら喜んで来たんです。バレたらやばいですけど、楢崎さんならどうにか出来るでしょ?」


時計の針は5時を指していた。
日の出までの風俗店の営業は禁止されている。
大体の営業は7時からだ。

しかし俺にとってそんなことはどうでも良かった。

入ってきた男数人は、どこかで聞いた汁男優の待機所を髣髴とさせる。
服を脱ぎ、志乃の顔を見ながらみっともなく手を動かしている男。
なにやら道具を取り出している男。

俺にとっては何もかもが初めての光景で、何も考えることが出来ない。

なにか考えているような頭の中は空回りするだけで何も浮かんでこない。


「なぁ、本当にいいのかよ?」

「いいですよね?楢崎さん。」


メガネの男がこっちをみる。
俺はそれを感じながら男達の背中を見ていた。