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バタン、と扉がしまる。
閉鎖された空間。

ただ隣の男は自分を見ているだけなのに、何故かそれが追い詰められているように感じる。

何か、言わなきゃ。

疑い深い視線。
脅迫観念すら感じながら俺は腕を組み直した。

しばらく天井を見つめていた志乃は、息を整え終わったのか、こっちに視線を寄越してきた。
なにか文句を言いたげな目。

口を開くと同時に俺はそれを阻止するように口を開いた。


「やっぱ……男に突っ込まれるならなんでもいいんですね。」


頼りない体。
薄っぺらくて、華奢で、小さくて。
まるで女みたいだ。
男のくせに。


「は?」

「男に突っ込まれてヒイヒイ喘いで。とてもお似合いでしたよ。」

「ショーじゃねぇんだよ。」


憎々しげな視線を寄越しながら、志乃が俺を見る。
その目はさっきのジンと重なって、なにか自分がとんでもないことをしているのかもしれないという気分になる。

しているのかもしれない。
俺は……。

でも、あんたが悪い。

俺は、悪くない。

あんたが、悪いんだ。


「はは、ほんと汚い。」


そう、俺は、悪くない。

コツコツと音がして、さっき見ていた志乃よりも今見える志乃はデカい。
触れられる距離まできて、しゃがむ。

志乃はさっき肋を俺に踏まれたからか、少し構えている。
しかし、あくまで屈服するのは嫌なのか、それでも俺を睨みあげている。


「男何人も咥え込んだその体で今さら誰かに愛してもらえるとでも思ってんのかよ。この変態ド淫乱が。過去を変えられるとでも思ってんのか?変わんねーんだよ。この底辺のクズが。」


その憎い頬を掴んで、思いきり睨む。

ちらりと遥幸さんの顔がちらついて、その頬を握り潰してしまいたい気持ちに駆られる。


「こんなことしてるお前に言われたくねぇよ。」