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「え?」


頭がすぅっと真っ白になってそれから脳内の歯車が急に回転し出すのがわかる。

ちひろ、ちひろ、そうだ。
千尋って隼也の執事の彼だ。
そういえば隼也が名前を呼んでいた気がする。


「ごめんなさい、僕が首を突っ込んでいいことじゃないことはわかっているんですけど……っ」


頭が回り出した瞬間に相手の様子が伝わってくる。

相当に焦っている。
声音は震えて、どうしようかと悩んでいるように聞こえる。


待って、何、なんだ。

ただならぬ気配を察知して、目が開いた。

志乃さん。
それから隼也。
どうして彼はこんなに焦っている?


何がなんだかわからなくて自分までパニックになりそうだ。


なに、志乃さんが、何?


「なに」

「あの、……お願いします、隼也様を、隼也様を止めてください」

「止める?」

「はい、止めてください。あの人あんなことする人じゃないんです。ただ、ただあなたのことが大事なだけで……っ!」


あぁ、どうしよう。
どうしたらいいんだ。
そんな声があとから聞こえて、頭が処理しきれない情報にぐるぐると回る。

これだけじゃ理解出来ない。

なに、止めるってなんだ。

だめだ、自分までパニックを起こしてはいけない。


慌てて息を吸い込む。

吸って吐いて、それからもう1度。
大きく……吸って……。


「千尋くん落ち着いて、ゆっくり、順を追って話して。」