1 耳を劈くような音に慌てて飛び起きる。 ガバリと体を起こすと携帯が鳴っているようだった。 真っ暗の中でライトを点滅させながら、部屋を照らす画面に眉をしかめる。 そして携帯に手を伸ばした。 着信だ。 俺、こんなにうるさい設定にしてたっけ。 いつもは聞こえるか聞こえないかのはずなのに。 慌てて画面を見ると見たことない番号だった。 着信を受けるボタンを押して、それから受話器を耳に当てた。 誰だよもう……。 辺りはほの明るい。 もうすぐ起きる時間だろう。 こんな時間に睡眠を邪魔するなんて。 「もしもし。」 若干イラつくのを感じながら声を出す。 「小早川さんのお電話でお間違えありませんか?」 少し高いトーンの声音。 けれど間違いなく男。 そんな声が聞こえてきてさらに誰かわからなくなった。 「そうですけど。」 会社か? なんかトラブル? 「私、千尋と申します。こんな早朝にお電話申し訳ありません。」 綺麗な言葉遣いに柔らかな物腰。 その中に確かに感じる焦り。 ちひろ、ちひろ……。 誰だ? 俺はチヒロなんて名前の男なんて知らないぞ。 寝起きでぐるぐるとする頭で考える。 考えようとしているだけで、まだ寝ている頭は多分動いてない。 「ちひろ、……どうしたんですか?」 ふわふわとした口調になっているのがわかる。 そう問いかけると携帯の向こうでごくりと唾を飲む音が聞こえた。 「あの、シノ……都志乃さんのことで。」 |