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「天才って信じたくてもさ、世間一般から見れば俺らは量産型バンドの一つに過ぎないんだよ。」

「……うるせぇ、そんなの、」


知ってる。
何度も言われた。

その意味がずっとわからなくて考えていた。

ある人は評価してくれるのにある人は評価してくれないのはなんで?
1度は俺を見てくれたくせに、離れていったのはどうして?

俺はずっと縋りたくて縋ってたかった。
未練があった。

だけど俺にはどうすることも出来ないことだった。
どうにかできるかもしれないってどこかで思っていたから、捨てきれなかった。

持ってしまったから、感じてしまったから、もう一度戻りたくて、もう一度欲しくて。

擬似錯覚までして、縋って、なんとか忘れまいとした。

視線が欲しくて、熱くて、恋しくて、焦がれて。

種類の垣根まで越えて満たそうとした。

戻れないところまで来ていると分かっていて、もうあそこに行けないとどこかで理解していながらも、いつの日かと夢見て。


快感を覚えてしまった体は、もう元の体には戻れない。
戻ることができない。

知らなければよかったのかもしれない。
こんな心地よさ、こんなきもちよさ。
知らなければ、素知らぬ顔して生きていけたのかもしれない。

知ってしまったから欲しくなる。
欲しがってしまう故に不満が高まる。
欲求不満で自意識過剰になって傷付く。
知らない方が、幸せなことだってあるかもしれない。


俺はたしかにあそこに行かない方が、あの幸せを知らない方が幸せになれたのかもしれない。

あの時間だけは自分の中では色褪せない誇りで、この先何があっても後悔なんてしないでおこうと思ってた。

だけど、すべての元凶なのかもしれない。


「もう、やれよ……早く終わらせろよ……」

「そう言ってくれて嬉しいよ。シノさん。恋人っぽく情熱的にしようよ」

「ほざけ、さっさと腰振って出しやがれ」