2 俺は、ブルーバスターのshino。 みんなにかっこいいと言われて、尊敬されたshino。 歌が上手くて、みんなを惹き付けるshino。 聴衆の前で、輝いている男。 みんな俺だけを見て、俺に注目してる。 どんなふうに歌うんだろって思われてる。 「シノさん。」 「っちがう、違う」 「なにが?」 「shinoは、俺であって俺じゃない。俺は違う。こんなことしない、こんなことで喜んだりしない。こんな、こんな、体売らなきゃ生きていけないような、そんな男じゃ、ない」 「でも現時点でそうでしょ。男に抱かれて喜んでる体でしょ?こんな場所で足開いて喘いでるような男だよ。」 「っう、……ふ、ぅ、ぐ」 「もう体にしか価値がないんだよ。世間から必要とされなくなってるんだよ。現実見ろよ。いつまで縋ってんの」 「っあ、あ……」 「いつかまたあそこに戻れると思ってるんだろ?いつかまた這い上がれる日が来るんじゃないかって思ってんじゃないの?」 汗をまき散らしながら、マイクを持って歌う。 目の前の人間の目を全部かっさらって、惚れさせる。 俺だけを見て俺だけの声を聞いて。 目に悪いほどの照明を浴びて、耳がぶっ壊れそうなほどの爆音の中で声を張り上げる。 俺の全てで作り上げる空間。 その場が一体になる快感。 脳内で再生される俺の曲。 ギターのコード。 ドラムが刻むリズム。 たくさんの目が、見てる。 「無理だから。」 「……っは、」 「いくらアンタが頑張ろうと無理だから。あそこに行くことは無理だから。だってアンタ向いてねーんだもん」 「……っ、な、に。」 目の前にあるのはグレーの瞳。 俺を哀れむような蔑むようなグレーの瞳。 いつからその眼差しは綺麗なものじゃなくなったんだ。 |