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「おはようございます」

「あぁ、遅かったなー小早川」

「……え、えぇ」


デスクに鞄をおいて一息。

満員電車だった。
いつも乗ってる電車は少し早いからそこまでだったけど、少し時間をずらすだけでこんなにすごいことになるなんて、知らなかった。

自分でも分かるほどげっそりした顔をして、俺はパソコンを開く。

すると隣からカラカラとキャスターの回る音が聞こえて、慌ててそっちを見る。


「なぁ、どうだった?」

「はぁ……?」

「昨日だよ昨日。誰に案内されたんだ?」


課長だ。
俺は課長の顔を見ながら、しどろもどろになる。
なんと説明したらいいのか。
あそこにshinoがいることを課長は知ってるんだろうか。


「最新はあの女優らしいぞ。一昨年までドラマに引っ張りだこだった……。すごいよなぁ、AVまで出したんだと。売れたけど……まぁ、制圧がすごいらしくてな」

「いろいろ大変なんですね……」

「芸能界は華やかだけど、その代償はでかいな。あ?やって俺ら庶民にちやほやされてたのに、一度興味が引いたら、今度は俺らに蔑まれて生きなきゃいけない。」


課長がニヤニヤしながらいうのを聞いて、性格悪いなぁなんて思う。
でも確かにそうなのかもしれない。

売れっ子はちやほやされて、番組とかでもVIP対応なのに、あの時のドラマに出て一躍有名になった人っていう過去系になると、バラエティとかに出てる。
それこそ、女優だったはずなのに芸人みたいになってる人とかも良く見る。

テレビに出れるだけいいのかもしれないけど……。


「で、誰だ。誰に案内されたんだ?」

「……誰でもいいでしょう」

「なに、口止めされたのか?」


べつに……されてはないけど。
俺は部長の顔をちらっと見て、ため息を吐きそうになるのを我慢する。
冴えない顔は風俗が好きそうな顔っていったら偏見かもしれないから言わないでおく。
そうだ、そういえばこの人が原因で俺は風俗に行くハメになったんだ……。


「よかったか?」

「よかっ……、まぁ……よく……ないことは……無いですけど……」


チラつくのはシノのあの顔。
俺は一生懸命消しながら首を振る。
思い出したら体が熱くなる。
下手したら勃起しそうな気だってする。


「またいってみろよ、行きたいだろ?」

「行きませんよ!!」

「同じ人を指名もできるし、他の人に行ったりもできるぜ。あそこどんなプレイだってしてくれるしな」

「どんなプレイですか……」

「それは行ってからのお楽しみだ。紹介した俺に感謝しろよー。」


下品な笑い方をするのを聞きながら、眉を寄せる。
もう絶対行かない。