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「……ちゃんと見といてくださいよ」

「はい?」

「さっきから目、逸らしてばっかじゃないですか」

「……そんなこと、ないですよ。」


一瞬ギクリとして薄ら笑いを浮かべる。
隣でビデオを回している男を見て、慌てて目の前に視線を戻した。

本来入る場所じゃない場所に性器がが出し入れされる。
その様子は、なんともグロテスクでずっと眺めるには酷なものがあった。
それに、両方とも自分にもあるものなんだと思うと、なんだか自分にまで嫌悪感が湧いてくる。
軽蔑したって所詮目の前の男と一緒なんだと知らしめられる気がする。


「うっ、あっくぅ……っ、や……っあ、あ、」

「いやって言わないでいいって言ってよ。気分が出ない」

「やめ、やめ、ろ……っは、あぅ、ンッ!んんっ!!」


嫌がって未だに緩く相手の胸を押し返している志乃。
時折力なく拳で胸を叩いている。
だけど、もう顔は蕩けて真っ赤、時折噛み殺しきれない媚びるような喘ぎ声が盛れてる。
揺さぶられながら、短く「あっ」と声を漏れさせている。
溢れでてしまうというようにふるっと震えて背をのけぞらせる。
その様子を見ていたら、なんだかむず痒くなってくる。
太ももを擦り合わせそうになって、激しい嫌悪感を抱きながら首を振った。

ちがう、何考えてんだ俺。

腰を動かして、快感を追って自分の体の一部を相手の体に入れて。本来受け入れるところではない場所に受け入れて揺さぶられて。

女みたいに扱われて喘いでるんだぞ。
それを見て、興奮するなんて俺も変わらない人間になってしまう。

自分の中で何かが変わってしまうような気がして、俺は目を逸らした。
少しだけ俯くと、ゆっくり瞬きをする。


「そんなことないって、全然見てないじゃないですか」

「は?」

「ほら、しっかり見て。あなたがさせてるんだから」


そんな俺を見ていたのか、副店長が俺の顔を前に向かせた。
顎を掴まれてカメラのようにしっかりと固定される。
すると俺の目は手に持っているカメラのように目の前の二人をしっかりと映した。


「……っく、あ、……あ、んぁ、っあ……」


甘い声に釣られて頭の中に蘇ったのは電話で聞いた喘ぎ声だった。

早川さんと、志乃のやつ。
ぼんやりと志乃の上で腰を振るジンを早川さんに重ねてしまう。

早川さんもあーいうふうに腰を振るんだろうか。
汗をかきながら、征服感に満ちた顔をして快感に恍惚顔をするんだろうか。

ほんの少し想像して、息が震えた。

もし、もしも俺があの人だったら、俺が早川さんに犯されたりしたんだろうか。あんなふうに、揺さぶられて喘いでいたのだろうか。

ありもしない妄想をして、奥歯を噛み締めた。


どうして、あの人なんだろう。
あの人がいなかったらよかったのに。