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「金...?」


ふう、と煙を吐き出したジンが俺の服に手をかけた。
俺はそれを押さえながら首を振る。


「おい、なんでそこに金が関係あるんだよ」

「シノさん犯したら金くれるっていうから。たぶんシノさんの一人相手にするより多いんじゃないっすか?」

「お前、買収されるような……そんな」

「なんで?シノさんとやってることは一緒でしょ。」

「……っでも、あんなやつに!!」

「シノさん、世渡り上手って言葉知ってます?媚を売るって言葉知ってます?」


知らねーわけねぇだろ。
俺だってさんざんしてきた。
ここにきて知らない気色悪いおっさんに媚びへつらって、ヘラヘラしてきた。


「それと、これが……どう関係あるんだよ……っ」

「ありありじゃないですか。シノさん、芸能界ってそういうのがちゃんと出来ないと生き残れないんですよ。」


ジンが俺の顔を見つめる。
その目はひどく虚ろな気がした。
昔から虚ろでぼうっとしている目をしている奴だったが、さらにその酷さが増したような気がする。


「ジン……」

「自分より立場が上の人間には、何も知らないバカのふりしていうことを聞いとく方が身のためなんですよ」


耳の近くでそう小さく言われて、目を見開いた。
変わってしまった。
変えさせられてしまった。
俺はこいつのことを詳しく知っているというわけじゃないけど、たしかに変わってしまったことが分かった。

初めて会った時のこいつは、飄々としていて自分の意思を貫くやつだった。誰にも染まらない、ちゃんと足で立っているような。

俺だけじゃ、ない。

そんな気がしてどこかこいつにも同情してしまった。

あぁ、こういう感覚なんだってわかった。

可哀想で哀れで。


「ん、んんっ!!」


ぼうっとそんなことを考えていたら、体の力が抜けていたのかジンが俺の服を脱がせる。
あっという間に脱がされた上半身。
次には下半身に行こうとするのに俺は慌ててはっとして、ズボンを抑えた。