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必死に作り上げてきたものが壊されていく。
傷つかないように、自分を保っていられるように必死で作ったものが壊れていく。
音を立ててガラガラと。


「ほんとうはさぁシノさん。こうする以外にも手はあったんじゃないの?どこかさ、こうされてもいいやって思ってたんじゃないの?」

「っんなわけ!!」


いやいやだった。
でもあまりにも借金が多くて、ヤミ金にも手を出してて、もうダメだったんだ。
体を売るしかもう俺の売るものはなくて。
勉強もしてなかった。
歌ももう売れなかった俺は、歌を捨てるしかなかった。

仕方ない、で塗り固めたガードを殴られて壊されていくような感覚がする。

その感覚がどこか、あの大舞台から落とされたあの時の感覚と似ていて体の温度が低くなっていく気がした。

歌が悪いんじゃない。
お前が世界から必要とされてない。

ニットがずるりと頭の上から落ちるのを合図に、ジンが俺の体をドンと押した。


「っ、て……は……?」


硬い床に背中がぶち当たって、脳まで揺れる。
ぐらりと視界が揺れて、俺を見下ろす目と銀髪。


「始めようか」

「は?始める?」

「だってあの人の命令だから」


ジンが俺の上に乗り上げて、後ろを指さす。
そこには壁に持たれて腕組みをしてこっちを見ている金髪の男が、楢崎がいる。
手城はビデオカメラを構えてその隣に立っている。

まさか、おい。


「っく、なに、すんだよ……っ離せ、退け」

「慣れてるでしょ、俺にも接待してくださいよシノさん」

「誰がお前なんかに……っ嫌だよ!」

「嫌でもするけど。」


やめろ、触るな、見るな。

ジンの手が触れる度にそこがバチバチと弾けて、痛む気がする。

五年前の俺と、今の俺が一体化する。
shinoと、俺が同じものになる。

違う。違う。

俺は、違う。


「やめろって、やだ、やめろ!!」

「やめない」

「な、んでこんなことすんだよ!!」


カチ、と音がして俺の上に乗ったジンがタバコに火をつけた。
ジッポーがゴト、と音を立てて床に投げられる。

違う、俺は違う。

男に犯されて、喜んで喘ぐような男じゃない。

そんな情けない男じゃない。
そんな人間じゃない。

虐げられて、蔑まれるような人間じゃない。

もっと、もっと、他人とは違う特別な人間。


「金もらったからだろ。」