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「おい手城!!」


テメェ裏切りやがったな。

思い切り睨むと手城は俺の知らない顔で俺を見つめていた。

そのままレコーダーは音を流し続け、ハルと俺がヤってるときの音まで撮ってやがった。


「どういうつもりだ……こんなの犯罪だぞ!!」

「犯罪っていまさら言います?この場所で?この場所は法も何も通用しませんからね。」


表情をぴくりともさせずにそう言ってのける男は、俺をここに連れてきたヤクザのようだと思った。
本当に怖い奴は、怒らない。
感情を表に出さない。
そして、頭がいい。

レコーダーが止まって、手城が何食わぬ顔でレコーダーを懐にしまう。
当たり前のことをしているような仕草に、また怒りが湧いてくる。

こいつは、この男がどういうつもりで今日俺のところに来たのかだいぶ前から知ってたってことか。
それなのに何も言わずに、いつもと同じ顔でそばにいて、挙句の果てに俺を追い詰める材料を作る協力をして。

裏切り、やがったな。
俺、お前のことを信用してたのに。


「おい手城、どういうつもりだよ。俺を売ったのか」

「……売った?」

「だってそうだろ!」


怒りが湧く。
なんだかんだ俺は、お前を見ると安心してた。
信用してた。

お前だけは俺の味方だって、思ってた。

思わず手城の胸ぐらを掴んで大きく揺さぶった。

けれど手城は今まで見たことがない冷ややかな目で俺を見下すと、ふっと鼻で俺を笑った。


「何を言ってるんですか。あなたはもともと売り物でしょう。私は金になる方を選ぶだけ。裏切るも何も無い。」

「お前、そんな」

「……何を勘違いしているのやら」

「……っ、く」


なんだよそれ、なんだよそれ。

怒りを通り越して呆れるとはこのことか。
体の力が抜けて、掴んでいた手も離した俺はふらふらと手城から離れた。

俺が勝手に、勘違いしてただけか。
そーか、そーかよ。

結局最初から俺の味方はどこにもいなかったってことか。

胸が、心臓が痛くて、苦しい。


「あなたは何もわかっていないらしい。だから僕、あなたに自分のことをよくわかってもらおうと思うんです。都志乃さん」

「は……」


ヘタリと座り込んだ俺を見下すように男が何かを言ったら、かちゃりとドアが開く音がした。

思わず顔を上げれば、そこには銀髪のひょろながい男が立っていた。


「……ジ、ン」

「おひさしぶりです。シノさん。」