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特にすることもなく、手城は俺の持ち場を離れたきり戻ってこない。
だが、待っていろと言われた手前、待たないわけにはいかない。

手城は俺がここに来た時から面倒を見てくれている黒服だ。
面倒を見てくれているというか、他の奴に接しているところを見ていないからなんとも言えないが、もしかしたらみんな同じ待遇なのかもしれない。
けれど、辛い時は励ましてくれたり、世話をしてくれる奴だ。

一応この店では副店長という立場に居るらしい。
ほかの黒服と居る時は確かにそう思うが、単体でいる時はそうは思わない。

口うるせぇババアかと思う。


「あー、眠てぇ」


ごろんと横になって、目を伏せる。
柔らかいベッドがいいけど、あいにくここには硬い床に等しいカーペットが敷かれた床しかない。

けれど、相当眠いのか、意識が飛びそうな心地よさにこれでも安眠できる気がした。


「都さん?」


あー、落ちる。と思った瞬間手城の声が聞こえて、ガチャッとドアが開く音がする。

あー、くそー、すげー寝れそうだったのに。

ゆっくりと体を起こして、若干前のめりになる姿勢を自分でも感じながら目を開ける。

そこには手城ともう一人、何度も思い出したあの顔の男が立っていた。


「おはようございます。」


あぁ、もう朝か。とかそんな場合じゃない。

胡散臭い貼り付けたような笑みを浮かべる金髪の、男。


「おいおい手城、営業時間は終わっただろ……」