3 特にすることもなく、手城は俺の持ち場を離れたきり戻ってこない。 だが、待っていろと言われた手前、待たないわけにはいかない。 手城は俺がここに来た時から面倒を見てくれている黒服だ。 面倒を見てくれているというか、他の奴に接しているところを見ていないからなんとも言えないが、もしかしたらみんな同じ待遇なのかもしれない。 けれど、辛い時は励ましてくれたり、世話をしてくれる奴だ。 一応この店では副店長という立場に居るらしい。 ほかの黒服と居る時は確かにそう思うが、単体でいる時はそうは思わない。 口うるせぇババアかと思う。 「あー、眠てぇ」 ごろんと横になって、目を伏せる。 柔らかいベッドがいいけど、あいにくここには硬い床に等しいカーペットが敷かれた床しかない。 けれど、相当眠いのか、意識が飛びそうな心地よさにこれでも安眠できる気がした。 「都さん?」 あー、落ちる。と思った瞬間手城の声が聞こえて、ガチャッとドアが開く音がする。 あー、くそー、すげー寝れそうだったのに。 ゆっくりと体を起こして、若干前のめりになる姿勢を自分でも感じながら目を開ける。 そこには手城ともう一人、何度も思い出したあの顔の男が立っていた。 「おはようございます。」 あぁ、もう朝か。とかそんな場合じゃない。 胡散臭い貼り付けたような笑みを浮かべる金髪の、男。 「おいおい手城、営業時間は終わっただろ……」 |