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元、人気バンド『BLUE BUSTER』のボーカリスト『shino』。
類稀な音程性確率を誇る天才的な歌声と、聞くものを引き込む美しいビブラート。
身長160センチ、体重45キロの華奢な体から出るとは思えない重低音の透き通った歌声。
曲を殺さない無色透明な何にも染まらない歌声をしている。
『mine is mine』でメジャーヒット。この曲は1年間オリコンチャートで1位を取得し続けるという輝かしい業績を収めた。
しかし、ヒットしたのはメジャーヒットを叶えたその1曲だけであり、次々と曲を出すも大衆の心を掴むことは出来なくなった。
続々とほかのバンドがメジャーデビューする中、『BLUE BUSTER』の人気は衰退し露出することも少なくなりやがて干されてしまった。
一説では、メンバーのリーダーである『shino』の態度があまりにも良くないからだというものもあったが、果たして真相は定かではない。

その後、『BLUE BUSTER』は解散に追い込まれメンバーはそれぞれ違う道に進むこととなった。幸い、『shino』改め都志乃以外のメンバーは学校をやめておらずそのまま普通の学生に戻り、就職先を決めることが出来ている。しかし、都志乃は学校をメジャーデビューする際に退学しており、受験をし直す必要があった。また、多額の借金を抱えていたためすぐに働く必要があった。借金のせいで親には勘当されており、返す宛がない。当時未成年だった志乃は会社の経営するサロンで働くことを余儀なくされた。



「もしもし、楢崎です」

「あー、こんにちは楢崎さん。」


俺は読み漁った都志乃に関する記事を思い出しながら、漁っていた番号の中から一つの番号にかけた。

しばらく続くコール音の後、間延びした声が聞こえた。
その声を聞きながら、頭の中にある完璧なシナリオを思い出す。

言って聞かないのなら、力づくでするまでだ。

俺は、遥幸さんを守る。
お前みたいな人間に、早川さんは、遥幸さんは、あげられない。
お前みたいな人間に、遥幸さんの未来を壊させてたまるか。

引き離してやる。

才能があるのにそれを活かす力がない。
世渡りが下手くそ。
頭も悪い。
ちゃんとした学もない。
人間として劣っているあいつは、あの人なんてお似合いじゃない。

お似合いどころじゃない。
そんな簡単な問題じゃない。
あの男があの人を不幸にするのが目に見えてわかる。


穢れきって、汚い人。
たくさんの人と体を重ねて、汚れきった人。


あいつなんかに渡してたまるか。


遥幸さんが幸せにならない未来なんて、俺が許さない。


「前話したこと、お受けして頂けますか?」

「はは、もちろんですよ。」