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「ずいぶん可愛いことしますね。びっくりした。」


もう慣れたんだろう。
初めての頃を思い出すと笑いそうになってしまう。
ゾワゾワと心臓が変な音を立てていたが、それを思い出すと少しだけそれが和らいだ。

不慣れでオドオドしていたハル。
それなのに今は常連客のように、ネクタイを緩ませながら俺に近づいてくる。

その目、その顔。

俺は前に感じた嫌悪が嘘だったかのようにハルを求める。
これまで感じたことがないほど自然に、この男に触れられたいと思う。
あんなにも俺は、男に触れられることを嫌悪していたというのに。


「ずいぶんと早いお越しじゃねぇか。」

「近くにいたので」

「近く?」

「後輩と一緒に近くでご飯食べてたんです」

「邪魔、しちまったか」

「いえ、何よりも志乃さんが優先ですから。」

「ん、ハル……もっと近く。」


両手を広げて。そうしたら緩む顔。
ハルが俺をゆっくりと抱き締める。
その体温がじんわりと染みてくる。
心地よくて、俺は身をあずけた。


「志乃さん、忙しかった?」

「ん?」

「連絡、無かったから……」

「ちょっと、な。」


胸板に頬を擦り付けながら、腰に回した腕に力を込める。
満たされていく。
充実していると感じる。
ここから、離れたくないと思ってしまう。

ハルがこれまでのことを聞いてきて思うのは、あのガキの言う言葉。

ダメだと分かっている。
これは相当やばいことなんだって分かってる。

けど、もうそんなことどうでも良くなってきていた。


「志乃さん、今日はずいぶんと甘えたですね……」

「こんな俺は嫌いか?」

「……そんなわけ……、大好きです。」


あー、もっと。
もっと、言ってくれ、気持ちいい。


「ハル。」

「志乃さん、大好きですよ。」

「んん……ハル、キス」

「もちろんです。」