2 「ずいぶん可愛いことしますね。びっくりした。」 もう慣れたんだろう。 初めての頃を思い出すと笑いそうになってしまう。 ゾワゾワと心臓が変な音を立てていたが、それを思い出すと少しだけそれが和らいだ。 不慣れでオドオドしていたハル。 それなのに今は常連客のように、ネクタイを緩ませながら俺に近づいてくる。 その目、その顔。 俺は前に感じた嫌悪が嘘だったかのようにハルを求める。 これまで感じたことがないほど自然に、この男に触れられたいと思う。 あんなにも俺は、男に触れられることを嫌悪していたというのに。 「ずいぶんと早いお越しじゃねぇか。」 「近くにいたので」 「近く?」 「後輩と一緒に近くでご飯食べてたんです」 「邪魔、しちまったか」 「いえ、何よりも志乃さんが優先ですから。」 「ん、ハル……もっと近く。」 両手を広げて。そうしたら緩む顔。 ハルが俺をゆっくりと抱き締める。 その体温がじんわりと染みてくる。 心地よくて、俺は身をあずけた。 「志乃さん、忙しかった?」 「ん?」 「連絡、無かったから……」 「ちょっと、な。」 胸板に頬を擦り付けながら、腰に回した腕に力を込める。 満たされていく。 充実していると感じる。 ここから、離れたくないと思ってしまう。 ハルがこれまでのことを聞いてきて思うのは、あのガキの言う言葉。 ダメだと分かっている。 これは相当やばいことなんだって分かってる。 けど、もうそんなことどうでも良くなってきていた。 「志乃さん、今日はずいぶんと甘えたですね……」 「こんな俺は嫌いか?」 「……そんなわけ……、大好きです。」 あー、もっと。 もっと、言ってくれ、気持ちいい。 「ハル。」 「志乃さん、大好きですよ。」 「んん……ハル、キス」 「もちろんです。」 |