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「いらっしゃいませー!」


前俺が選んだところに比べると雰囲気が断然違う。大衆向け、という感じがプンプンする。
その証拠にこの場にいるのは仕事終わりのサラリーマンばかりだ。


「ごめんね?こんなところで」

「えっ、」

「隼也こんなところ来ないだろう?ごめんな」

「なんでそんな事言うんすか!嬉しいです」

「うれしい?」


うん、嬉しい。
早川さんと来るところなら、どこでも嬉しい。
しかも、ふたりきり。
なんて思って、けど言っても迷惑になるから口をつぐんだ。

店の中は木でできたカウンターテーブルが、ぐるりとあってその中で店の人たちがラーメンを作っている。
座敷とテーブルが二つずつあって、こじんまりとしたラーメン屋だ。
けれど食欲をそそるいい匂いがむわりと充満している。
小さいのは匂いがこもっていいのかもしれない。


「ここは、一人でくるんすか?」

「そうだねー仕事の飲み会とかの後に来たりとかするよ。」


一つだけ空いているテーブルに対面で座る。
お水とお絞りが運ばれてきて、バイトだろうか。お姉さんがペコッとお辞儀して、早川さんを見た。
ほんの少しだけ嬉しそうにしているのを見て、あー、モテてる。と思った。
そりゃ嬉しいよなーこんなイケメンなー。
早川さんこんな女の人と付き合ってくれれば俺も何も言わないのに……。


「早川さん」

「なに?」

「あのお姉さん、早川さんにハート飛ばしてたっすよ」

「何いってんの君は……」

「ほんとっすよ!モテるっすねー!このこのー!」


小声で言えば早川さんが少しだけ照れくさそうにする。
例えば、早川さんがあのお姉さんと付き合ってて、大事にしてたら。
うん、やっぱり、似合う。
似合うし、安心する。
応援したいなって思う。

きゅう、と心臓が縮まるのを感じてそっと目を閉じた。

やっぱり相手が誰であっても、羨ましくて悲しいのは変わらないのかもしれない。