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「どーこまでいくんすか?」


どんどん中の方まで歩いていく早川さん。
煌びやかなネオンはどんどんと遠ざかって、古びたビルだらけの路地に入っていく。
明かりもだんだんと少なくなって、切れそうな看板の灯りと申し訳程度の街灯。


「もう少しだよ」


まだ着かないの?
俺疲れたんすけど。
なんて雰囲気を出しながら、俺は全く疲れてない。
むしろどんどん駅から離れていけばいいと思う。

歩いて、歩いて、もっと遠く。

そうすれば早川さんといる時間も長くなる。

店についてご飯を食べて……そしたらまた駅まで帰る道のりがあるんだから。


でも少しだけ俺はそわそわしていた。

なぜなら俺はこの場所を知っていたからだ。


「ここを……曲がったとこのはず……」


一度しか来たことはないけど……早川さんが通いつめているはずの店の近くの道。
記憶力のいい俺はよく覚えている。

変なリズムで鳴る心臓。

浮かれた心の端っこが、黒い何かに犯されているみたいだ。


近くなっていく。


あの人と早川さんの距離が。


そう思うだけで無いはずの可能性をぐるぐると考えてしまって、気分が悪くなってきていた。