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電車に揺られて着いたのはもちろんネオン煌びやかな夜の街。
少しだけ眠いのを我慢して俺はあくびをかみ殺した。


「隼也、決まった?」

「んー……」

「食べたいものなにかないの?」


なんかもう正直、早川さんと居られたらなんでもいいっていうか。
何でも美味しいっていうか。
何食べてもいいっていうか。

俺がその場で「うー……」っと悩めば、早川さんは少し苦笑いをして辺りを見回した。

気持ち悪いほどのタクシーの量。

キャバクラで働いているのがすぐにわかるお姉さん。
高いヒール履いて、ドレスとあんまり変わらないような服装をして……髪の毛すごいキマってる。

それから道をゆく人に誰彼構わず話しかける必死そうなキャッチのお兄さん。


「無いならラーメンでいい?」

「え?ラーメン?また?」

「おいおい、またっていうなら食いたいもの言ってくれよ」

「あっ、全然ラーメンで文句ないっす」


早川さんの隣を歩くだけで、点字ブロックでよろけた体がたまに触れる。
それは腰だったり足だったり、手だったり。

俺の体はその度少しだけ熱くなって、どうしようもなくこの瞬間が幸せだと思ってしまう。