3 触りたいのを抑えて、早川さんの顔を見る。 だめだ、触ったらきっともっと触りたくなっちゃうから。 覗き込んだ早川さんの顔は、憔悴していた。 目の下にははっきりと分かる隈があって、心なしか老けた気がする。 「うそ、寝てないでしょ、早川さん」 「うわ、隼也びっくりするだろやめて」 「ちゃんと食べてるっすか?」 しわも増えた気がするし。痩けた? そう思って早川さんに聞く。 けど早川さんは眉を寄せただけだった。 だから思わず頬に人差し指でその頬に触った。 自分から触っといて、あ、触っちゃったなんて思う。 なんか俺アホみたいだな……。 ん、少し乾燥してる……かも。 人差し指から伝わる質感、俺は早川さんの頬を2、3回つんつんとつついた。 すると、早川さんがじっと俺を見つめた。 久しぶりにちゃんと目を見た気がする。 二つの目が俺をしっかりと見つめてて、俺もその目を見つめ返す。 ……至近距離過ぎて、心臓が破裂しそう、かも。 「仕事が忙しいから。確かにちょっと前より睡眠時間は減ったし、ご飯も雑になったよ。だけどもうすぐ終わるから。心配しなくていいよ」 ドクンドクンとなる心臓。 早川さんはそう言うと、俺が触れていた方の手首を持ってその手をそっと遠ざけた。 少しだけ、切なくなる。 けど、俺の手に触れてくれた温もりを感じたから、それは少しだけ中和された。 「そう……ですか。っすよね、ほんと忙しかったっすもんねー……これももうすぐ終わりか!清々するっすね!」 「そうだね。」 早川さんがほんの少しだけ、ケータイを置いている位置に目をやった。 そして目を伏せると、もう一度俺を見た。 「頑張ってくれたから……飯でも食べに行くか。」 |