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触りたいのを抑えて、早川さんの顔を見る。
だめだ、触ったらきっともっと触りたくなっちゃうから。
覗き込んだ早川さんの顔は、憔悴していた。

目の下にははっきりと分かる隈があって、心なしか老けた気がする。


「うそ、寝てないでしょ、早川さん」

「うわ、隼也びっくりするだろやめて」

「ちゃんと食べてるっすか?」


しわも増えた気がするし。痩けた?
そう思って早川さんに聞く。

けど早川さんは眉を寄せただけだった。

だから思わず頬に人差し指でその頬に触った。
自分から触っといて、あ、触っちゃったなんて思う。
なんか俺アホみたいだな……。
ん、少し乾燥してる……かも。

人差し指から伝わる質感、俺は早川さんの頬を2、3回つんつんとつついた。

すると、早川さんがじっと俺を見つめた。

久しぶりにちゃんと目を見た気がする。
二つの目が俺をしっかりと見つめてて、俺もその目を見つめ返す。
……至近距離過ぎて、心臓が破裂しそう、かも。


「仕事が忙しいから。確かにちょっと前より睡眠時間は減ったし、ご飯も雑になったよ。だけどもうすぐ終わるから。心配しなくていいよ」


ドクンドクンとなる心臓。
早川さんはそう言うと、俺が触れていた方の手首を持ってその手をそっと遠ざけた。

少しだけ、切なくなる。
けど、俺の手に触れてくれた温もりを感じたから、それは少しだけ中和された。


「そう……ですか。っすよね、ほんと忙しかったっすもんねー……これももうすぐ終わりか!清々するっすね!」

「そうだね。」


早川さんがほんの少しだけ、ケータイを置いている位置に目をやった。
そして目を伏せると、もう一度俺を見た。


「頑張ってくれたから……飯でも食べに行くか。」