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べつに、べつに、べつに。
俺は別にあいつと連絡取れなくたっていいし、関係ねぇし。
俺は別にあいつのこと好きじゃない。
好きじゃない。
好きなんかじゃない。

だっておかしいだろ。
おかしすぎる。

俺は、ホモじゃ、ねぇ。


「ちょ、……っとマジで?」

「マー…ジ。」

「っ、あ……くぅ……っ!!」


男の汗ばんだ背中に手を回すのが嫌だから、床に広げて顔を背ける。
ゆっくりと押し広げて入ってくる感覚は気持ちいい。
ぞくりと広げられた穴が快感を拾って、満たされたと勘違いする。
快感っていうのは麻薬だ。
気持ちいいは、毒だ。


俺は、ナラザキとかいう生意気なガキに言われたことをずっと考えていた。

俺がハルを好きだということ。
それから、そのハルと関係を一切経てばこの仕事におさらばできること。

確かにおかしいとは思っていた。
気づいてたさ。
俺だって中卒並みの馬鹿だけどそんぐらいわかる。
……借金返し終わってるって。
かといってここで働かないにしても俺には行くとこがない。
ここをやめてどうする?
一文無しじゃなんもできねぇ。
住むとこもねぇ、まともな学歴もねぇしもうこの歳だ。
働き口だって早々見つかんねぇ。

よく考えれば、男に揺さぶられてるだけでいえば飯が食えて、風呂もはいれて屋根がある場所で寝れる。
それはいい待遇なのかもしれない。

そう思ってやめたいと思っても、本気でやめることは考えなかった。


でも、ハルと連絡を取らないだけであいつと会わないだけで、この生活がやめられる。
しかもまた歌える?

日々男と寝る快感を覚えていく体に恐怖を感じなくて済む。
こんなことしなくて済む。


そう考えたら、俺の頭の中は混乱してきていた。