3 結局そのまま家に帰ってメールを確認したけれど、志乃さんからのメールは来てなかった。 けれど、志乃さんからのメールが返ってこないことはそんなに珍しいことじゃない。 前だって何度もあったし。 だから、仕方ないかなんて思って俺は携帯に充電器を挿した。 でも最近は割と早めに返事が返ってきていたから、……なんかあったのかなぁって思ったり。 少し心配になった俺は、「大丈夫ですか?」とだけメールしておいた。 あの人、長文だと読むのに疲れるらしいから。 そしてそのまま仕事をして少し寝て、次の朝起きた。 その時にも一応メールを確認してみたけど何も来てなかった。 いそがしいのかな。 「おはようございます」 「おはよう」 珍しく朝から出勤してきた隼也に、珍しさを感じて思わずパソコンから目を離して隼也を見た。 「どうしたんすか?」 相変わらず持ち歩く必要があるのかわからないカバンを部屋の隅に置く隼也。 俺の顔を見て首をかしげた。 「いや、早いなと思って」 「忙しいから早く来てくれって頼まれたんすよー……俺できることあるんすか?」 「おいおい、なんでもしたいしたい言ってたお前はどこいったんだよ」 隼也らしくない発言に不信感を抱く。 しかし隼也は金色の髪の毛を掻くと、「うーん」とうなり声を出しただけだった。 「いつも暇そうだったからよかったんすけど、こうやって忙しそうにしてるとむしろ邪魔なんじゃないかと思うんすよねぇ……」 「お前が?珍しい」 「珍しい……って、俺結構謙虚っすよ?なーんて。」 どこが。 どこが謙虚なんだお前の。 「どこが謙虚なんだ」 はぁ、とため息を吐く。 ぐいぐいじゃないか、何に対しても。 そう思っていれば隼也が俺を見つめる。 「ねぇ早川さん」 どこかゾクッとするような声音。 目をそらしていた俺は隼也の顔を見た。 「小早川な」 「……ううん。なんでもないっすやっぱ」 動揺を隠すようにそう言ったら、隼也は何か言いたげに少し悩んだあと首を振った。 「は?」 「仕事してくるっす!」 |