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「好きでしょ?好きじゃなくても特別な感情は抱いてる。でしょ?」

「ん……な、わ、け……」


ハルを、俺が?好き?
んなわけないだろ。

そりゃ、ハルは優しくて都合がいい男だ。
客としてはすげー良くて……でも、あれ?

俺は最近のハルと居た時間を思い出す。

最近は会ってない。

ラーメン以降会ってないが、毎晩のように明日来ねぇかな、なんて思ってる自分がいた。
ハルと食べるラーメンが美味しい自分がいた。


「困るんですよ。」

「……は?」

「志乃さん、俺、金だけはあるんですよ」


金髪の男が、俺に近寄る。
妙な威圧感に、固まってしまえば十分にあった距離はあっという間に詰められてしまった。


「ここであなたがあの人との関係を一切経つと言うのなら、俺はあなたを自由にします。あなたの再起のために尽力しましょう。しかし」


綺麗な顔をしている。
なかなかに、そこら辺にはいないような綺麗さだ。
これはキャバクラに行っても逆に人気かもしれない。

金髪の男の目は色素が薄い。
茶色の中心の黒い瞳が俺を捉えて離さない。


冷たい手が俺の頬をするりと撫でて、顎を掴んだ。


「それが出来ないというのなら……無理矢理にでも引き剥がします。あなたの未来は保証しません。」


ゾクリと背中を這う悪寒。

金持ちの脅しは、恐ろしい。


「都志乃さん。どうしますか?口約束でいいですよ、しかし俺は記憶力だけはいいので覚悟してくださいね。」


だんだんと顔が近づいてくる。
綺麗な肌、ピンクの唇。

あぁ、触れそうだ。


「……乗った。」


発した息が、男の唇で跳ね返って俺の唇に触れた。