1 「お願い?そりゃ一体なんだ」 接待する必要はないと判断した俺は、口調を崩す。 正直敬語は苦手だ。 「単刀直入に言えば、もう会わないで欲しい」 「あ?んな事言われても俺に知ったこっちゃねぇよ。あいつはただの客だぞ。」 「店に来たら追い返して、連絡もすべて無視して欲しい」 「あのなぁ。」 よくわからないことをつらつらと続ける男。 一方的にそんなことを言ってきて、一体なんのつもりなんだ。 どういうつもりだ。 流石に少しイラっとして、俺は男を睨む。 しかし目の前の男は、少しも怯む様子はなくそのままの表情で口を開いた。 「従うならあなたを自由の身にすることだってできますよ。俺はそんぐらいのこと簡単にできます。」 「は、ぁ?」 こんな若い男に、こんなことを言われてさらにイラッとする。 上から目線。 じっと目を見ていたら、俺を小馬鹿にしているようにさえ見える。 金があるからって、庶民見下してんだろ。 こんな水商売やってるからって。 男はふっと鼻で笑って続ける。 「あなたが望むなら歌手活動だって支援しますよ。あなたの好きなように活動したらいい。ねぇ、都志乃さん」 「……っ?!」 俺は思わず目を見張る。 こいつ、なんもかんも知ってる。 |