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「お願い?そりゃ一体なんだ」


接待する必要はないと判断した俺は、口調を崩す。
正直敬語は苦手だ。


「単刀直入に言えば、もう会わないで欲しい」

「あ?んな事言われても俺に知ったこっちゃねぇよ。あいつはただの客だぞ。」

「店に来たら追い返して、連絡もすべて無視して欲しい」

「あのなぁ。」


よくわからないことをつらつらと続ける男。
一方的にそんなことを言ってきて、一体なんのつもりなんだ。
どういうつもりだ。

流石に少しイラっとして、俺は男を睨む。

しかし目の前の男は、少しも怯む様子はなくそのままの表情で口を開いた。


「従うならあなたを自由の身にすることだってできますよ。俺はそんぐらいのこと簡単にできます。」

「は、ぁ?」


こんな若い男に、こんなことを言われてさらにイラッとする。
上から目線。

じっと目を見ていたら、俺を小馬鹿にしているようにさえ見える。

金があるからって、庶民見下してんだろ。
こんな水商売やってるからって。

男はふっと鼻で笑って続ける。


「あなたが望むなら歌手活動だって支援しますよ。あなたの好きなように活動したらいい。ねぇ、都志乃さん」

「……っ?!」


俺は思わず目を見張る。
こいつ、なんもかんも知ってる。