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後から来た黒子に服をもらって、それを身につけた俺はできるだけゆっくり歩く。
給料がもらえたってもらえなくたって関係ない。
できるだけ勤務時間を減らすそれに限る。


「あ、都さん!!」

「手城」


部屋に入ろうとした時、声がするから何かも思えば、手城だった。


「都さん本当に知りませんか?」

「なにが」

「ここらでは有名な人で……キャバとかに良く行くと聞いていたので女好きかと思ってたんですけど」

「あ?」

「今回は志乃さん指名なんです」


手城が不思議そうな顔をする。
そんな事言われても、もし会っていたとしてそんな少ない情報量じゃなんのことかわからん。


「名前は?」

「えっと、有名財閥のお方で」

「だから名前」

「それは教えるなって言われてるんです」

「なんだそりゃ、わけわからん」

「知らないですよ……お金持ちの考えてることはよくわかりません。」

「ふーん……」


お前が知ってるか?とかいうから知ってるかどうか確かめようとしただけなのに。
なんだなんだ、女かあいつは。

少しだけ機嫌を悪くした手城がフロントの方へ帰っていく。
俺はそれを見送りながら部屋に入った。