4 右手にあるのはメルレックのCD。 そうか、俺も客側としてこうやってCDを買って、聞くような立場になったんだな。 改めてそう感じた。 同じ舞台に立っていたはずなのに、今はこんなにも遠い。 ジャケットを飾るメルレックのメンバーは俺が知っている時と少し変わっていた。 ジンは相変わらず変わってないが。 あいつは少しむかつく顔をしている。 狐のような細長の目に薄い唇。 イケメンというより美人という顔。 髪を銀にすると、尚浮世離れして男か女か見紛う。 それなのに、身長は高くて男らしい。 俺とキャラが被ってる(俺は認めたくない)上に、世間ではあいつの方がハイスペックだと言われていた。 たしかに、身長高い方が世の中的には勝ち組かもしれないが。 ……身長低くたって……得すること……。 ねぇな。 ふう、と一人落胆するとまた声が聞こえてきた。 多分さっきの女の子達だろう。 「ねぇねぇ、シノってちっさいね?でもよくわかったよねぇ……ブルーバスターって古いよね?」 「うん、あたしらが小学生の頃だもん。聞いてた覚えあるけどなーんも曲覚えてない。そもそもどんな声だったか忘れちゃったし……そんなに良くなかった気がする。」 小さくなった女の子の声。 だけど俺の耳にはしっかりと届いた。 特に俺のことを知っていた子の方の言葉が頭の中に響く。 『そんなに良くなかった気がする。』 ふっと目の前が一瞬真っ暗になって、次の瞬間ゆがんで辺りが回り出す。 「っは、……く、くそ……っ」 胸が苦しくなって、息がし辛くなってくる。 息が、苦しい。 |